コロナによるベトナムの水産物輸出の変化

最近のベトナム水産輸出加工協会(VASEP)などによる報告から、新型コロナウイルスによってベトナムの水産物輸出にいくつかの変化が生じていることが分かる。大きく分けて

  • マグロ輸出相手国の多様化とツナ缶輸出の増加
  • 堅調なエビ輸出と輸出相手国の多様化

とマグロ輸出とエビ輸出に大きな変化が生じている。

マグロ輸出

まずマグロについては、2020年1~4月の輸出額は前年同期比16%減の1億9,600万ドルに留まり、特に米国は36%も減少している。しかし、米国へのツナ缶輸出は前年同期比2%増となっている。これはロックダウンに伴う需要増の影響と考えられる。

EUに対するマグロ輸出も18%減の8,200万米ドルに留まったが、一部の大手輸出業者によるEU向け輸出は増加している。そしてツナ缶輸出は特に急増している。これはスペインやイタリアでのマグロ加工工場が操業停止していたためである。

ASEAN向けについては4月に入ってタイなどへの輸出が急増している。1~4月の輸出で前年同期比で増加しているのが日本とエジプトで、日本は36%増、エジプトは59%増である。日本へは冷凍マグロの輸出、エジプトへのツナ缶の輸出が増えており、いずれもサプライチェーンの問題により輸出相手国が多様化している。

エビ輸出

米国へのマグロ輸出のシェアが減少したのに対し、米国への輸出が堅調なのがエビである。2020年第1四半期は前年同期比18.2%の1億1,550万ドルを記録した。これは有数のエビ輸出国であるインドやエクアドルでの生産が大幅に低下した事に起因する。

各国の生産減によりエビ価格は高騰しており、4月末のブラックタイガーの輸出価格は、1月末と比べて17~20%増加している。

また、急増しているのがカナダ向け輸出で、1~5月中旬までで前年同期比32%増の5,470万ドルを記録した。これはカナダ企業が米国依存を脱却する動きの一貫と見られている。

エビ輸出市場全体としては、今後の中国のエビ加工工場の操業回復による需要増、2020年7月に発効するEUベトナム自由貿易協定(EVFTA)により、エビ輸出について優遇税率が適用され、主要輸出国であるインドやタイよりも有利になることなどが材料視されている。

参考文献[1]:VASEP, “EXPORT OF VIETNAMESE CANNED TUNA TO THE US WENT UP”, 5 Jun 2020

参考文献[2]:VASEP, “VIETNAM SEES A FAVORABLE OPPORTUNITY FOR SHRIMP EXPORTS AFTER COVID-19”, 5 Jun 2020

参考文献[3]:Vietnam+, “Shrimp exports to Canada rise steadily”, 25 Jun 2020

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