新型コロナウイルスで「風が吹けば桶屋が儲かる」的な砂糖市場

今年の筆者は砂糖市場に注目している。そんな中、以下のロイター通信の2つの記事は非常に興味深い。

タイの砂糖生産量が干ばつにより9年振りの低水準ー業界団体(Reuters, 2020年1月31日)
Reuters, “Thailand’s sugar output to hit nine-year low due to drought – trade body”, 31 Jan 2020

  • 2019/20のタイの砂糖生産量は前年比28%減の1,050万トンに落ち込む可能性が高い
  • 世界第2位の輸出国からの輸出減少により2年半振りの高値
  • タイ製糖協会のRangsit Hiangrat氏によると、輸出量は1年前の1,100万から600~700万トンに減り、次の収穫期2020年10月の生産量は1,000万トンを下回る可能性がある
  • ロイターのアナリストは年末までに砂糖先物価格は3%上昇すると予想

砂糖の2年振り高値によりブラジルの製糖工場は生産計画の変更を検討(Reuters, 2020年1月15日)
Reuters, “Sugar’s surge to two-year high has Brazilian mills considering output change”, 15 Jan 2020

  • ブラジルの製糖工場が、自動車用のバイオエタノールの生産を減らして製糖へのシフトを検討
  • 今シーズンのブラジルは、サトウキビの34%だけを甘味料に回し、残りはバイオエタノールに回していた
  • 14.32セント/ポンドという粗糖価格は工場を転換うるには十分でないが、更に価格上昇すれば先物取引と組み合わせて砂糖生産量を増やす可能性がある
  • 砂糖とエタノールの平価は15.45セント
  • エタノールの売上は3日で入るが、砂糖は45日と長いので、工場が生産を切り替えるには相応のプレミアムが必要になる

補足

干ばつが砂糖不足を引き起こして先物価格を上昇させる可能性については当サイトでも以前に指摘済みである。

関連記事:世界の干ばつが砂糖不足を引き起こす

タイでは通常4月までの乾季が6月まで続くと見込まれ、水不足も深刻である。通常、タイの製糖工場は5月初旬までサトウキビを粉砕するが、今年は供給の問題から3月上旬に停止する可能性も指摘されている。

一方で一気に事態を変えたのが新型コロナウイルスである。新型コロナウイルスで大きく値段が下がっているのが原油である。原油が下がると他のバイオエタノール燃料にも影響が出てくる。

昨年のブラジルはサトウキビが豊作で、バイオエタノール燃料価格が上がっていたので、サトウキビをエタノールの生産に回していた。しかし、世界的な干ばつによりサトウキビ生産量が落ち込んで砂糖価格が上昇し、更に燃料価格が低下するというダブルパンチにより、製糖からバイオエタノール生産に切り替えるのではないかという動きが出ている。

  • 新型コロナウイルスの蔓延
  • 原油価格の下落
  • バイオエタノール価格の下落
  • サトウキビエタノールの生産から製糖にシフト

という「風が吹けば桶屋が儲かる」的なシフトが起きつつあるというのが砂糖市場における懸念材料である。

しかし、記事でもある通り、生産の切り替えには粗糖価格は少なくとも15セント/ポンド、15.45セント/ポンド以上でなければメリットが無いという見方が示されている。1月31日現在で14.61セント/ポンドに達しているが、果たしてどうなるか。

粗糖価格
出典:TradingEconomics
       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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