新型コロナウイルスによる世界的な悲観ムードの中で、5~10年先を見据えた話題を出したい。近年、プラスチック容器が環境に悪いとして、プラスチック包装を規制する動きが欧州を中心に拡がっている。輸送や貯蔵コストが余計にかかって逆に環境に悪いという意見もあるが、実際に環境に悪いかは多面的な分析が必要である。
仮にプラスチック容器が環境に悪いとして代替製品として有力なのは、やはり紙である。石灰岩を使った新素材といったものを提案されているが、どの代替素材がコスト面・生産量で採算に合うかは現時点では未知数であり、当面は紙が中心となるだろう。
これは別にスターバックスが進めるような紙ストローだけでなく、紙容器や包装紙は至るところにありふれている。
例えば食品包装に限っても、紙コップや牛乳パック、肉まんの台紙、紙トレイ、チョコレートの箱、ぶどうなど果実を保護する育果紙など枚挙に暇がない。その技術開発もメーカーは積極的で、例えば王子製紙なら酸素や水蒸気を通さないプラフィルムと同等の保護性能がある包装紙を開発するなど、紙のイメージを覆すものも出てくる。
LEADERS online「新素材のプラ代替品が続々登場 。「脱プラ」潮流に商機を狙う素材メーカー」2018年12月3日
包装紙需要は日本国内よりも新興国の方が長期的な需要の伸びは大きいと考えられる。
例えばベトナム紙・パルプ協会(VPPA)は、ベトナムでの包装紙需要は今後5~10年で14~18%増加すると予想しており、2019年の紙の消費量は前年比9.8%増の540万トンだった。その背景には天然資源環境省の環境保護指針における使い捨てプラスチック容器から紙容器へのシフトも一因である。
また、TPPでの包装紙の輸出機会も期待されている。従来は高付加価値なパッケージ製品を生産できる企業は少なかったが、Lee & Man VietNamやVina Kraftなどベトナムの主要製紙会社は、再生紙から高品質な包装紙を製造するために多額の設備投資を行っている。Lee & Man VietNamは新しい生産ラインに6億5,000万ドル以上を投資している。
生産能力が高まれば国内包装紙需要を賄えるだけでなく、輸出の増加にもつながると考えられており、安定した成長が期待できる分野だろう。
但し、当面は新型コロナウイルスやら原油を起因とした経済ショックによる影響が大きすぎるので、あくまでも5年10年先を見据えた話である。少なくとも短期的にはパルプの輸入やロジスティクスの問題でベトナムの製紙業界は混乱している。
参考文献:Viet Nam News, “Demand for packaging paper expected to grow strongly”, 11 Mar 2020