新型コロナウイルスによるロックダウンでタイの首都バンコクのゴーゴーバーは閉鎖されていた。経済活動再開に伴って営業再開される見込みだが、元の活気に戻るかどうかは疑問視されている。
ゴーゴーバーとは、露出の多い女性が舞台上で踊っており、気にいった女の子がいれば指名して一緒に酒を飲んだり、場合によっては連れ出し料をバーに払って「(いわゆる)お持ち帰り」を行える店である。
タイの夜遊びを少しでも知っている人なら、ソイカウボーイ、ナナプラザ、パッポン通りという名前にピンとくるだろう。タイでは売春は違法(罰則は無い)だが、「自由恋愛と売春の垣根が分かりにくい」という建前から警察は黙認している。売春斡旋には罰則があるが、ゴーゴーバーは賄賂を支払うことで摘発を逃れている。
タイ警察が摘発に力を入れるのは児童買春と個人売春(路上で呼びかけるセックスワーカー)であり、前者は当然違法であるし、後者は賄賂を払っていない事や治安悪化の懸念などが原因である。
性産業の衰退については最近は新型コロナウイルスによる影響が強く言われることが多いが、タイのゴーゴーバーに関しては1970年代から一貫して衰退の方向だという。
ロイター通信が、新型コロナウイルスによるパンデミック以前にパッポン博物館(ゴーゴーバーの歴史などを扱う博物館)を開いたマイケル・エルンスト氏(オーストリア人で元ゴーゴーバー経営者)のコメントを紹介している。
エルンスト氏によれば、1970年代、ベトナム戦争中に米軍相手に繁栄したゴーゴーバーであるが、その衰退はコロナ以前から始まっていた。それは、バンコクだけでなくタイの観光地は大きく広がり、その規模も大きくなってきたことにより、今や外国人観光客の53%が女性となり、観光に占める性産業の割合が減少してきているからだ。
現在、多くのゴーゴーバー従業員が失業状態にあるが、経済活動再開によっても観光客が戻ってこないようであれば、そのまま閉店するような店も増加し、ますます衰退の一途をたどる可能性もあるだろう。
参考文献[1]:Reuters, “Go-go bars gone as coronavirus hits Bangkok’s sex district”, 29 May 2020
参考文献[2]:バンコク・ダーク・ナイト「タイにおける売春・買春の違法性から実情までを詳しく述べていく」2016年4月23日