2009年、東アフリカ共同体(EAC)のケニア、タンザニア、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダの5ヶ国は10年以内の通貨同盟を設立するという協定に署名した。アフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)などと同様に、地域経済の結びつきを強めるための共同体の一つである。
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この通貨同盟は、EUにおけるユーロのように、東アフリカ・シリングという共通通貨を導入し、2024年に最終的に通貨統合を目的とするものである。(2016年にEACに加盟した南スーダンが参加するかどうかは不明である。)
しかし、現時点で通貨同盟の設立に必要な機関が揃っておらず、進捗が遅れている。例えば、2015年に設立された東アフリカ通貨研究所(EAMI)は、通貨同盟のためのプロトコルの準備作業の役目を負うが、その作業は進んでいない。また、2018年には必要な機関のうち3つが設立されたが、いずれも予定よりも遅れての設立である。
進捗の遅れは言わずもがな、EUのユーロで起きてきた一連の問題に起因する。
2017年7月、欧州通貨研究所の教訓を活かし、EACがどのように通貨統合していくかについての調査のため、EAC関係国の中央銀行総裁がドイツを訪問している。この時、相当な「財政的規律の必要性」や「国家主権の一部を地域全体の機関に譲渡する意思・約束の規模の認識の必要性」などが教訓としてまとめられた。
単一通貨に加わる前の少なくとも3年間、加盟国は以下の基準を満たしている必要がある。
- インフレ率8%以下
- 輸入額4.5ヶ月分の積立金
- 公的純債務が対GDP比50%以内
このうち、1と2は殆どの国が達成しているが、3がネックとなっている。ケニアの債務比率は56.2%と満たしていないし、ウガンダは近年急速に債務比率が上昇して41%にまで達している。
通貨統合前の3年間満たしていなければならないので、ケニアは2021年までに債務比率を目標値内に抑えなければならない。地域最大の国家として、ケニアが条件を満たすかは非常に重要であり、今後も現在の難航した状態が続きそうだ。
参考文献:The East African, “Adoption of single EAC currency to take longer”, 19 May 2019