PCR検査数を増やさないのは貴方のせい

PCR検査数が少ない理由は、この記事タイトルを見てやって来た「PCR検査を増やすべき」「私もPCR検査をして欲しい」と考えている貴方(特に後者)のせいである。(そうではない人であれば申し訳ない。)

4月16日の東京都における陽性率が93.1%(149/160)と非常に高かったことから、PCR検査を増やすべきという意見が再び増えているように思える。無闇にPCR検査を増やして軽症・無症状の陽性者数が増えると医療崩壊を起こすと説明されるが、理由はそれだけではない。

「感染経路不明(本当に分からないだけでなく、心当たりが性風俗であるなど他者に言えない場合など)」が増えている以上、従来のクラスター追跡が効果的でなくなっており、検査数をある程度増やすべきという意見は理解できる。

しかし、偽陰性(本当は陽性なのに陰性と判断されてしまうこと)の問題が発生し得る以上、PCR検査結果に絶対的な信頼を置けない。しかし、症状は無いけど子供が心配だから検査してほしい、ちょっと熱が出ただけでPCR検査をして欲しいとパニックになってコールセンターに相談する人が偽陰性の問題を理解していないのが問題なのだ。

PCR検査を増やして陽性だった場合でも、無症状・軽症者であれば自宅療養・宿泊療養などの代替策が可能となってきているので、実際のところ医療崩壊のリスクは低くなった。(検査に伴う院内感染などの問題は残る。)しかし、偽陰性だった場合に安心してウイルスをバラ撒きかねない人が存在するのが問題なのだ。

風邪のような軽い症状があって体調が悪い時にPCR検査を受けられたとしよう。検査結果が陽性であれば出勤せず、自宅療養などをするのだろう。しかし、陰性だったら出勤するはずだ。そもそも体調が悪いのに意地でも出勤しようとする文化が問題なのだ。

新型コロナウイルスに感染していなくても、従来の風邪やインフルエンザの可能性があり、それらだって他人に感染させる可能性があるのだ。それにも関わらず、新型コロナウイルスでなかったら安心して出勤するという習慣があるから、もし偽陰性だった場合を考えれば無闇に検査できないのである。

勿論、今の検査体制が万全であるとは思えない。CTスキャンによりウイルス性肺炎の症状がある場合など一部の条件を除き、保健所や医師がどういった基準でPCR検査を実施すると考えているかが不明瞭であるからだ。そして、その基準も自治体によって異なるのも問題だ。

検査基準を明確化して公開し、具体的にどのようなケースでPCR検査に至ったのかと「至らなかったのか」を明確に公表すれば、現状の検査数でも状況を判断できると考えられる。理想的にはランダムサンプリングによる抗体検査などによる実態把握だが、今のところ日本でそのような調査が実施される見通しは無いので次善策である。

About HAL

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

View all posts by HAL →