気温から東京の緊急事態宣言解除時期を考える

筆者は現時点でゴールデンウィーク明けで緊急事態宣言が解除されるとは考えていない。潜伏期間の大多数が2週間以内なので緊急事態宣言から2週間(4月21日)で新規感染者数がピークアウトすれば1ヶ月で解除できるが、欧米のような強力なロックダウンですら2週間でピークアウトしなかった。東京も平常時の異常な満員電車は改善されたが混んでいることは変わらないし、道路交通も平常時の半分程度であり、専門家会議が主張するような7~8割の接触源を実現できているとは到底考えられないからだ。

一つ参考になるデータとして平均気温を取り上げる。以下は、東京都の月別の最高気温・平均気温・最低気温について、平年(1981~2010年)と2020年のデータを示したものである。但し、4月は1~13日までのデータである。

東京都の平均気温の推移(平年と2020年)
出典:気象庁

今冬は暖冬であったが故、1~3月は平年より高い気温が続いた。4月については前半のみのデータなので、4月末までのデータが揃えば平年並み程度くらいに達するのではないか。気象庁によれば、暖冬の年の夏は平年並みかやや平年より高い傾向があり、平年の気温を見ることは今後の感染収束時期を予測する上で重要だ。

というのも、いくつかの研究で新型コロナウイルスは22~24℃以上で感染力が落ちるという報告が出ているからだ。例えば、カイロ大学Adly Anis氏の論文では、COVID-19は13~24℃で最も活発化すると分析されている。

Anis, Adly, The Effect of Temperature Upon Transmission of COVID-19: Australia And Egypt Case Study. (April 2, 2020). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3567639 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3567639

そうすると、最高気温のレベルで非活発化する日は5月においても少なく、平均気温のレベルで非活発化が見込まれるのは6月である。単純に平年並みかそれ以上の気温推移を想定しても、4~5月の段階で暑さによる感染収束は期待しにくい。5月早々に緊急事態宣言を解除してしまうと、第二波が早い段階で来てしまう可能性がある。

そうすると、ますます緊急事態宣言の解除時期の判断が難しくなるのではないかと予想される。現時点での予想は、1ヶ月経った時点で更に1ヶ月延長するのではないかと考えている。

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