イエス銀行の経営難を受けて市場が混乱しているインドだが、CNBCのコラムで、原油価格急落で恩恵を受ける国としてインドが挙げられている。
CNBC, “India could be a ‘major winner’ as oil prices plummet”, 12 Mar 2020
OPEC+での原油減産交渉の決裂とサウジアラビアの増産による原油価格の暴落で世界経済に大きな影響を与えると考えられている。景気後退で新興国に投資が集まるという事を言っているわけではないようだ。
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IHS Markitのアジア太平洋チーフエコノミストであるラジブ・ビスワス氏は、 2018-2019年度のインドの総エネルギー消費量の80%以上が輸入されており、エネルギー価格の下落により経常収支赤字を縮小すると指摘する。これにより石油化学や発電、輸送などのセクターの収益性が高まると予想している。また、インド準備銀行の利下げ余地が大きい事もプラス要因として挙げている。
DBSグループのエコノミストであるラディカ・ラオ氏は、原油価格の下落が購買力を高め、需要を下支えすると主張している。センチメントが改善すれば経済成長に寄与するという見解を示している。
UNCTADによれば、2018年度のインドの輸出額は5,145億ドル、輸入額は約3,248億ドルで1,897億ドルの貿易赤字、経常収支赤字は572億ドルである。CNBCの分析だと、原油価格が1バレル50ドルに達すると原油の輸入額が総輸入額の約20%を占めることになる。
筆者の考えでは経常収支赤字の削減というよりかは購買力が伸びることの影響の方が大きい。
現在の経常収支赤字はGDP比率で言えば2.1%程度であり深刻という数値ではない。貿易依存度は31%とそこまで高いというほどではないが、29.3%の日本では円高が敵のように言われるので、貿易の観点で見てもメリットはわかりにくい。
新型コロナウイルスがもたらす経済への悪影響を考えれば貿易や人の移動などを減らすことになり、貿易に依存した経済はショックが大きい。寧ろ現状のインドのような内需中心の経済構造であるならば、原油価格低下による購買力の向上はプラスに働くと考えられる。
とは言え、世界経済が落ち込むのはほぼ間違いない。あくまでも「他国に比べてマシかもしれない」という程度の話である。