筆者はコモディティ投資は好きであるが、可能であるならば株式に投資したいと考えている。原油よりも石油関連株、金投資より金鉱株である。こうした企業の株価は当該企業が扱う資源価格と強く連動するので、短期投資ならともかく、中長期的な投資であれば配当を考慮したいからである。
さて何度も言っている通り今年の筆者は砂糖に注目している。しかし、砂糖株の場合、粗糖を生産する企業と粗糖から製糖する企業では砂糖価格との連動の仕方が変わってくる。
例えば日本の製糖会社であれば、名前の通り「製糖」であり、原料糖や粗糖といわれるものを輸入して製糖する事業が主体となる。更にその事業は「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」にも規制され、基本的に粗糖価格の上昇は仕入れ値の上昇となり、株価は砂糖価格と逆相関すると考えられる。
実際、日本の主要な製糖会社の株価と、サトウキビ粗糖の国際的な価格ベンチマークとして使われるSugar No.11について、2012年1月~2020年1月までのピアソン積率相関係数を計算すると、塩水港精糖を除いて比較的負の相関係数が高いと言える。
企業名(証券コード) | 相関係数 |
日新製糖(2117) | -0.574 |
フジ日本精糖(2114) | -0.561 |
三井製糖(2109) | -0.551 |
東洋精糖(2107) | -0.452 |
日本甜菜製糖(2108) | -0.344 |
塩水港精糖(2112) | -0.174 |
他にも砂糖を原料として製菓などを行なう名糖産業(2207)も相関係数が-0.596と砂糖価格の影響が大きく、連動する銘柄は他にも多くあると言える。
では逆に、サトウキビや甜菜など原料糖の生産から行っている海外企業で砂糖価格と正の相関を示す企業はあるだろうか。いくつかスクリーニングした結果、以下の3社が抽出された。
企業名(証券コード) | 相関係数 |
Shree Renuka Sugars Ltd(SRES:NS) | 0.788 |
Bajaj Hindustan Ltd(BJHN:NS) | 0.769 |
Khon Kaen Sugar Industry PCL(KSL:BK) | 0.647 |
Shree Renuka SugarsとBajaj Hindustanがインド株、Khon Kaen Sugar Industryがタイ株である。これらはADRなどが無く、特にインド株は外資規制により投資へのハードルが高いが、かなり砂糖価格に連動していると言える。Khon Kaen Sugar Industryを取り扱う証券会社は日本国内にもある。
これら3社に共通するのは主要事業が「粗糖生産」と「バイオエタノール」であることだ。この3社はサトウキビ農園などを多く持ち、粗糖生産だけでなくサトウキビエタノールなど燃料事業、それを利用した電力事業などを手掛けていることが特徴である。
新型コロナウイルスで「風が吹けば桶屋が儲かる」的な砂糖市場でも指摘したが、砂糖価格と燃料価格の変化によりサトウキビの用途を粗糖とエタノールの両方を切り替える動きがある。この3社はその辺りのヘッジはしやすいが、逆に言えば砂糖価格の影響をもろに受けるので高く相関していると考えられる。
以下は日本でも比較的投資しやすいKhon Kaen Sugar Industry(コーンケーン・シュガー・インダストリー)の株価(右軸・バーツ・黄色)とSugar No.11(左軸・ドル・青色)を比較している。通貨を揃えていないのは筆者の怠慢だが、傾向を捉えるだけならこれで十分なはずだ。
グラフを見て分かる通り、コーンケーン・シュガーの株価が砂糖価格にやや遅れている事が多い。これは砂糖価格が先物価格であるという性質もあるが、現物価格と比べてもズレがあることには変わりがない。
最近の価格を見ても、砂糖価格が2019年7月頃から上昇に転じているのに対し、コーンケーン・シュガー株は2019年10月頃からようやく上昇に転じている。景気後退懸念や新型コロナウイルスの影響で株価の方が砂糖価格に比べてやや軟調であるが、今後砂糖価格の上昇が続くようであれば株価も上昇してくるのではないかと考えている。