以前、当サイトではYOUKI氏が米国での学資ローン残高問題を取り上げ、多くの学生にとっては高額な学費を払って大学に行っても、その投資はハイリスク・ローリターンであることを述べた。
関連記事:米国学資ローン残高が1660億ドルを超える:多くの学生はハイリスク・ローリターン
では、実際に米国はどう感じているかについて、CNBCは6月17-20日にかけて、18-65歳以上まで幅広い年齢層に対して全国2,803人に世論調査を行った。うち、大学もしくは大学院の学位を保有している人は1,498人(53.4%)である。
下図は、「大学の学位の価値をどう見ているか」について男女別に回答を示したものである。水色は「多大な借金をしてでも大学には価値がある」という回答は男女ともに20%程度だったのに対し、「大学に価値はあるが、多大な借金には見合わない」という回答(黒色)は、男性で52%、女性では64%に達する。「大学は学費に見合う価値が無い」(黄緑色)とする回答も全体で2割前後存在する。
実際に米国人の感覚でもハイリスク・ローリターンであるという認識が強く、高い学費に見合っていると感じているのは2割程度ということだ。
実際、米国では大学の学費がどんどん増加しており、インフレ率を調整しても過去30年間で平均で2倍以上の年間35,830ドル(生活費を含めれば48,510ドル)、州立学校は安いと言えども3倍の10,370ドルである。
ましてやハーバード大学なら67,580ドル、プリンストン大学は73,450ドルにも達する。学資ローンを受ける学生の70%は、卒業時に約30,000ドルの借金を抱えている。
しかしCNBCの分析によると、本質的な問題は学費の高さだけではなく「卒業できないこと」だという。米国の大学は卒業するのが難しいとはよく言われるが、実際にその通りで、
- 4年以内に学士を取得できた人はわずか40%
- 6年以内に学士を取得できた人でも約60%
であり、それ以外は更に時間がかかっていたり、或いは卒業できていないということである。
留年すればそれだけ学費がかかり、就業を開始する年齢が上がるだけでなく、中退であれば大学に行った恩恵をあまり受けられない。
議会調査局(CRS)の調査によると、高卒者と比較して所得は、学士保有者は70%増、修士以上の保有者は120%増であるのに対し、中退すれば18%増に過ぎず、無理してグレードの高い大学に行っても卒業できなければ、その恩恵を受けられないのである。
続き:米国の大学がハイリスク・ローリターンなのは学費だけが原因ではない(2):米国留学のためのチェックポイント