最近、インドの経済紙であるThe Economic Times(エコノミック・タイムズ)で金(ゴールド)についての記事が増えている。インドは豊富な人口と中間層の増大により、中国に次ぐ世界第二位の金需要を持つ国である。
米中貿易戦争の行末だけでなく、インドの総選挙結果など懸念事項が多い中、同紙のインタビューに対し、スイスのプライベートバンクのマーク・マシューズ氏は金に対する強い期待を示した。
金は来年には15%ほど高くなっているはずです(The Economic Times)
- 米中貿易交渉がどうなるかは分からないが、それについては金曜日を待つべき
- FRBが金利を上げるとは考えておらず、株価が低ければ資金が流れる先は限定的
- 米中貿易交渉が決裂すれば株式市場を押し下げることになる
- BJP(与党)が勝てば短期的には株式市場はプラス、政権交代が実現すれば「効力の無い政府」という見方からマイナスに働く
- GSTなどモディ政権の評価につながらない政策は株式市場を支えなかったが、長期的に見ればこうした構造改革が必ずしも悪いとは言えない
- 政権交代で株式市場が10%以上も下落する事態になれば、経済規模から買いの機会が訪れる
- 投資家はインドの銀行の不良債権問題を認識しており、長期間にわたり株価が低迷している銀行は不良債権問題が深刻であるケースが多い
- 米国は2年以内にリセッション入りすると思われ、高い資本収益をもたらす市場があるかは疑問だが、ヘルスケアなど特定産業について期待できるものがある
- 工業用金属は、ブラジルとオーストラリアの鉄鉱石供給の混乱があるが、概ね市場のバランスは取れている
- 貿易戦争など大国間の対立と世界経済への懸念からドル安を引き起こし、金価格の上昇が強く期待できる
補足
金だけでなく、広範に経済を捉えた良いインタビュー記事である。
1については以前に指摘した、米中協議の成否を待つべきという意見である。無論、決裂すれば3の通りマーケットに悪影響を与える。
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2も大方の予想と一致するだろう。投資先が無くなれば、金などに資金が逃避される可能性は高い。
4~6はインドの総選挙結果に対する影響についての見方である。モディ政権には批判も多いが、長期的には悪くないという見方が強く、選挙で勝利することはマーケットに強気の見方を与える。逆に野党が勝てば政権が不安定化するというのが大方の見方である
7は、インドの不良債権問題は度々指摘されるが、投資家はよく認識しているので、株価と財務をよく見るべきという助言である。
9と10が金属についてだが、マシューズ氏は特に金に対して強気の姿勢を持っており、タイトルの通り来年は15%ほど上昇しているという見方を示す。世界経済への懸念に対するドル安が金価格の上昇を牽引するという見方である。
インドでの金についての記事の増加傾向から見ても、リスクヘッジとしてインドや中国からの金需要が今後も増える可能性は高いと見える。