インドでの米需要の低迷により東南アジアの米価格が下落傾向を示す一方で、干ばつや洪水など潜在的な供給不足懸念もあり難しい状況である。
ベトナムの米価格は12年振りの安値(Bangkok Post)
- インドやフィリピンの米需要の低迷によりベトナムの5%破米価格は325ドル/トンと2007年11月以来の安値
- インドではルピー高とアフリカからの需要がドル建て価格を支えているが、4-7月のインドの米輸出は前年比26.5%減の314万トン
- タイでは、5%破米価格は前週の410-422ドルから400-418ドルに下落。それでもバーツ高により2018年6月以来の高値。干ばつと洪水の影響が出る可能性がある
- バングラデシュでは7月の洪水で40万トン近くの収穫済の米が流され、今後の供給に影響が出る可能性
来月から政府による米価格保証プログラムが開始(Bangkok Post)
- 米価格が所定のベンチマークを下回ったことにより、来月から価格保証制度により農家に差額が支払われる
- 米とアブラヤシの価格保証で590億バーツ相当のプログラムが承認
- うち133億バーツが米、214億バーツがアブラヤシ、残り250億バーツが米農家の生産コスト補助
- 水分量15%の白米など5種類の米が対象で、2020年10月まで10,000バーツ/トンの価格保証
- 1農家当たり30トンまたは40ライ(64,000平米)までが限度
- プログラムは国営農業農協銀行(BAAC)に運営されており、現在約410万の農家がプログラムに参加登録
- 作物価格保証制度は全体で4年間続き、保証価格は毎年更新される
補足
破米は「砕米」「くず米」などと呼ばれるような砕けた米を指し、5%破米は国際価格のベンチマークとして使われる。10%破米、15%破米など多くの等級が存在する。
日本では一部の米粉や酒などを除き、飼料やペットフードなどに使われることが多いが、東南アジアなどではBroken Riceとして精米を砕いたものを使う料理も多く存在し、身近な米である。
タイではバーツ高がネックとなってドル建てで見た時に米価格が高くなっているが、国内では需要不足によりバーツ建てでは大きく値下がりしており、10月から米価格保証プログラムが開始する運びとなっている。
全体的には需要の低迷が国際価格を押し下げる方向に働いているが、記録的な干ばつや洪水など、今後供給不足を招く可能性もあるので、米市場の動向は非常に難しい状況である。
参考文献
[1]Bangkok Post, “Vietnam rice prices near 12-year low”, 13 Sep 2019
[2]Bangkok Post, “Govt rice price payouts to start next month”, 15 Sep 2019