ベトナムでは2012年にLaw on Prevention and Control of Tobacco Harms(タバコ害の防止および規制に関する法律)が成立、2013年に施行された。
それから6年が経過したが、WHOのデータによるとベトナムの喫煙率は男性では45.9%と依然して高いままで、6年間で2%しか減少していない。これは世界で28番目の高さである。(女性の喫煙率は1.0%と低い水準である。)ちなみに日本の男性は33.7%で70番目である。
上の法律は、公共の場所での喫煙の規制や適切なタバコ税の設定、タバコの害に関する教育などを盛り込んだ理念法であるが、実態としては強く規制されておらず、ハノイなどを歩いていれば路上喫煙は非常に多く見られる。
ベトナム保健省によると、喫煙者は約1,700万人で、受動喫煙者は約3,300万人にも達し、毎年4万人がタバコ関連の疾患で死亡しており、交通事故やエイズによる死亡者よりも多いという。
喫煙者が減らない最大の理由は「たばこ税の安さ」であると言われる。ベトナムのたばこ税も何度か引き上げられているが、現在でも1箱当たり10円未満である。今や「世界で最もタバコを安く買えるのはベトナム」と言われることもあるほど安いのが特徴である。
2015年では、タバコ消費額が23.6億ドルで、タバコ産業からの納税(法人税+タバコ税など)は6.4億ドルに過ぎないが、タバコを原因とする病気の治療に10.2億ドル掛かっているという。
情報通信省は、規制によってマスコミでのタバコの広告は大幅に減少したというものの、オンライン広告は活発であり、また「ホテルやレストランの店頭でタバコを展示する」という抜け穴を使った実質的な広告も横行しているという。
筆者としては、現政権の「積極的な対外アピール(APEC会議の開催、米朝首脳会談の開催、汚職の取り締まりなど)」を見れば、共産国につきやすいネガティブなイメージの刷新の一貫で、タバコに対する規制も強める可能性が高いと考えている。そして、現在のタバコ税の異常な安さなどを考えれば、増税や規制に対する市場への影響は非常に大きいと思われる。
一方で、タバコ害に関する公衆意識の低さや、タバコの安さを理由に、ベトナムで電子タバコを利用している人は、筆者の主観では非常に少ない。しかし特に規制もされていないので、紙巻タバコの規制が進むようであれば、電子タバコの普及が進んでいく可能性はあると思われる。
参考文献:Vietnam+, “Vietnam sees just 2 percent decrease in smokers after 6 years”, 10 May 2019