電子タバコのリスク(健康リスク・規制リスクなど)については当サイトでも何度か指摘している(関連記事参照)が、新しく発表された研究で子供の受動喫煙によって将来の健康リスクや喫煙者に転じるリスクが指摘された。また、米国の州議会で未成年者に主眼を置いた電子タバコの規制検討のニュースも入ってきた。
子供を持つ世帯の成人の5%が電子タバコを使用:喘息発症リスクと喫煙者化リスクが増加(Mail Online)
- 電子タバコの平均利用率4.4%に対し、子供のいる家計での成人の利用率は5%と高い
- 喘息を持つ子供がいる家計での電子タバコ利用率は更に高く5.6%で、喘息を持たない子供がいる家計での利用率4.8%より高い
- 子供が喘息に罹患した事により、親が電子タバコにシフトした可能性がある
- 2019年1月にメリーランド州の少数民族で行われた研究では、電子タバコの受動喫煙が喘息発作のリスクを27%増加させる
- 世界保健機関によると、電子タバコのエアロゾルは、紙巻タバコの煙より高濃度の超微粒子を含むので、動脈を収縮させて心臓発作を引き起こす可能性が高い
- 2018年には、過去30日間に米国の高校生の20%以上が電子タバコを利用したという統計を発表
- 電子タバコ利用者がいる家計の子供は将来的に電子タバコ利用者になる可能性も高い
解説
元になる論文は、JAMA Networkにて5月6日に公開されたものである。原著は以下のサイトで公開されている。但し有料である。
記事要約のうち、見つかったデータが1と2である。いずれも95%水準で有意であり、子供が電子タバコの受動喫煙に晒されている割合が全国平均より高いことが分かっている。
その背景として論文では「元々は紙巻タバコを利用していたが、子供が喘息に罹患したので電子タバコに変えたのではないか」という仮説(3)を示している。
しかし、4の先行研究のように電子タバコの受動喫煙が喘息のリスクを高めるということから考えれば、逆効果ではないかという見方を示している。また、5のように心臓発作のリスクを高める可能性も高く、これは関連記事で紹介した研究とも一致する内容である。
また、6は同研究グループの昨年の論文で、未成年者の電子タバコ利用が深刻化していることを明らかにしており、受動喫煙によって子供が将来的に電子タバコ利用者になるリスクが高くなることも指摘している。
こうした状況は、
- 電子タバコに対する規制の緩さ
- 電子タバコは安全であるという盲信
- 家計での親の行動の影響
に起因していると思われる。電子タバコの健康への影響は研究が途上なだけで、安全だと断定されたわけではない。寧ろ健康を害するという報告が蓄積してきている。(紙巻タバコと比べてどちらが相対的に見て安全かは研究が待たれる。)
そんな中、米国ワイオミング州では未成年者の電子タバコ利用を規制する法案が検討されている。これは電子タバコに対する税金やオンライン販売規制など、何らかの抑止力をもたせることを求める法案で、2020年度への予算に組み込むことを目標としている。
今のところ産業への影響など電子タバコ税には賛否両論があり、法案成立には時間がかかると思われるが、前述の記事の通り、米国の高校では電子タバコ利用が深刻化している。
ロックスプリングス高校では95人を電子タバコ利用によって停学にするなど、組織レベルでの規制は進みつつあり、未成年者に対する規制が何らかの形で進んでいく可能性は非常に高い。
参考文献
Cody Enterprise, “Wyoming Legislature look at ways to curb e-cigarette use”, 6 May 2019