電子タバコによる金属曝露がDNA酸化損傷を引き起こす可能性

カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者らが公開した論文で、電子タバコ利用者は非喫煙者と比較して尿中の金属濃度が高く、金属曝露(特に亜鉛)とDNA傘下損傷の関連性が高い事が示された。

Sakamaki-Ching S, Williams M, Hua M, et alCorrelation between biomarkers of exposure, effect and potential harm in the urine of electronic cigarette users. BMJ Open Respiratory Research 2020;7:e000452. doi: 10.1136/bmjresp-2019-000452

研究では、ニューヨーク州バッファローを中心に集められた被験者(非喫煙者・喫煙者・電子タバコ利用者)53人を、40歳以下(n=23)と41歳以上(n=30)に分け、尿サンプルを用いて遺伝子やタンパク質を解析するバイオマーカー分析が行われた。喫煙者からは無煙タバコ・パイプ・葉巻の利用者は除外されている。

バイオマーカー分析により、電子タバコ利用者は非喫煙者に対し、有意にメタロチオネインの濃度が高い事が分かった。メタロチオネインは金属結合性タンパク質であり、通常は亜鉛と結合しているが、有害金属(カドミウムや水銀など)が体内に入った時に亜鉛と代わって結合し、体外に有害金属を排出する働きを持つ。

神戸学院大学 學報.net「毒性重金属から体を守るたんぱく質 「メタロチオネイン」の謎に挑む」

更に電子タバコ利用者は非喫煙者に対し、DNA酸化ストレスマーカーである8-OHdG (8-ヒドロキシーデオキシグアノシン)の濃度と、生体内酸化ストレスマーカーである8-イソプロスタンの濃度が有意に高かった。これらは40歳以下よりも41歳以上の方が濃度が高い。

こうした酸化損傷を示すバイオマーカーと尿中の金属濃度との関連性を調べるために11の金属について調べられ、電子タバコ利用者は亜鉛と8-OHdGの濃度が有意に相関していることが分かった。

亜鉛は通常身体に良い金属であるが、その摂取量は多すぎても少なすぎても身体に害をなす。性能力や毛髪のために亜鉛のサプリメントを摂取する人は少なくないが、先日も亜鉛サプリは精子を増やす効果が無いどころか逆効果の可能性が示唆される研究も発表された。

Gigazine「亜鉛や葉酸のサプリには「精子を増やす効果なし」と判明、それどころか副作用の可能性も」2020年1月8日

電子タバコにはバッテリーや噴霧装置など多くの金属を含む。電子タバコを利用することで亜鉛などの金属を含むエアロゾルを吸収することになり、それがDNAの酸化損傷と関係している可能性があるというのが今回の研究の発見である。

論文では、DNAの酸化損傷が蓄積すると狭心症や心筋梗塞、白血病、肺がんなどの疾患につながる可能性があると指摘されている。今回の発見はあくまでも相関関係であるが、電子タバコに潜在的なリスクがあるのではないかという可能性を示唆するものであり、長期的な追跡研究などが期待される。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

HAL の記事一覧 SlofiAのtwitterアカウント@slofia_finance