キャッシュレス化を制するのはデビッドカードだろう

消費税増税のキャッシュバックを餌に、政府はキャッシュレス化の推進を試みている。それに対して各社は顧客の囲い込みのために積極的に広告を打っている。また、○○Payといったスマホ決済サービスへの参入も相次ぐ。

日本でクレジットカードや電子マネーによるキャッシュレス化は、高齢者にはなかなか進まなかった。マスコミのメインターゲットが高齢者である以上、キャッシュレス化のスタンダードになるには「いかに高齢者を取り込むか」が重要である。

しかし、キャッシュレス化に抵抗を持つ高齢者は、

  • 使い方が分からない(スマホ決済の使い方、電子マネーのチャージ方法など)
  • 使いすぎないか不正利用されないか不安(クレジットカードなど)

といった意見を口にする。

慣れた人にとっては「チャージの何が難しいのか」と考えるし、現金を大量に持ち歩くよりクレジットカードの方が遥かに安全だと考えるが、そう考えられない人は多いのだ。そして、凝り固まった考えはなかなか変わらない。

それでも、消費税増税分がキャッシュバックされるとなると何らかの方法を採用する高齢者が多いはずだ。では、何が選ばれるかを考えれば、次のような条件を満たしている必要があると考えられる。

  1. クレジットカードのような後払いの仕組みではない
  2. 超有名企業によるサービス
  3. 極力簡単に利用できる

1については、実態はともかくクレジットカードを毛嫌いする高齢者が多いのは、これまでの歴史を見れば明らかだ。だから、クレジットカードをはじめとした「後払い」の仕組みを採用しているものは高齢者への普及が難しいだろう。

2については、マスコミでもよく目にする「誰もが知っている超有名企業」が手がけている或いは関与しているサービスであることが高齢者を安心させる。有名企業だからといって安心とは限らないのだが、そういう価値判断を持つ人は多い。大手企業であっても新興企業によるサービスは普及が難しいだろう。

3の「極力簡単に利用できる」というのは、チャージや口座からの移動といったユーザーによる操作や作業を必要としないものだ。スマホ利用なんてもってのほかだ。

こう考えると、これらを満たすのは「大手銀行系のデビッドカード」である。デビッドカード自体がVISAやらJCBやらは兎も角、売り出しているのはメガバンクといった超有名企業であり、口座に紐付いているので「持っている金額以上に使う心配」が無い。そして、チャージといった些細な工程も不要である。

長期的な視野に経てば高齢者をターゲットにして、その高齢者が採用したサービスに将来が無いように見えるかもしれない。しかし、現時点でサービスが乱立し、明確な勝者が無い以上、最初に大きなシェアを取ったサービスがネットワーク外部性による恩恵を受け、更に利用できる場所が増えていくという好循環に入る。

こうした理由から、日本におけるキャッシュレス化の争いはメガバンクによるデビッドカードの争いだと筆者は考えている。

逆に対極にあるのがスマホによるQR決済だ。電子マネーなどは店舗側に設備投資にコストがかかるので、中国などでは低コストで導入できるとして大きく普及した。しかし、日本ではコンビニや大手スーパーマーケットなどではクレジットカードや電子マネーが使えるので、(PayPayのキャッシュバックのような事が無い限り)面倒なQR決済を使う理由が無い。

デビッドカードに次いで可能性があるのはSuicaだ。Suicaをキャッシュバックの対象化とするかは検討中のようだが、もし「クレジットカード式でないチャージするのみのSuica」が対象になるなら、チャージが無いという条件以外は満たしている。そして、既にかなりのユーザーがいるので利用店舗などネットワーク外部性もある。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

HAL の記事一覧 SlofiAのtwitterアカウント@slofia_finance