アフターコロナがどうなるかはさておき、非常事態を脱した後は段階的に経済活動を再開させていく国が多い。観光産業も同様であり、アジア太平洋地域では「観光バブル」(tourism bubble)戦略が採られつつあるという。
バブルと言うとバブル経済のように過熱した状況を想起するかもしれないが、そういう意味ではなく小さな気泡が点在するかのように観光経済が回復していく様子を指す。「旅行バブル」(travel bubble)と表記するメディアもあるがが、バブルという表現は共通している。
例えば観光大国タイは、経済活動再開後も一気に観光産業を回復させるのではなく、特定の地域のみ外国人観光客を受け入れる戦略を採用することを検討している。タイ観光局(TAT)のユタサック・スパソーン局長は、観光産業の比率が高く、観光客の健康状態を追跡しやすいリゾート地(サムイ島やパンガン島など)での長期滞在を推進するといったアイデアを出している。
要するに国内全体の観光地を再開させるのではなく、局地的に観光客を集める「バブル(気泡)」を生成するという戦略である。
受け入れる国についても感染が収束し、かつ経済的な結び付きの強い中国やベトナムなどと二国間協定を結び、相互に観光客を受け入れるといった方法が提案され、今後数ヶ月を目処に進められていく可能性があると見られている。
似たような戦略は、オーストラリアとニュージーランドの間で採られることになった。両国は地理的にも経済的にも密接であり、検温などの対策は取りつつも二国間で観光客の行き来を進めていく。(二国間の往来なので名称は”旅行回廊”(travel corridor)である。)
ヨーロッパを見れば、エストニア、ラトビア、リトアニアが5月15日から国境を開いている。
中国に関してはまずは国内旅行を優先し、国内の主要な観光地について「バブル」を作るという戦略を採り、前述のようにタイなど少しずつ人の往来を増やしていく計画だ。似たような計画は韓国や香港なども検討しているようである。
参考文献[2]:CNN Travel, “Why Thailand isn’t reopening to international tourists yet”, 27 May 2020
参考文献[3]:Al Jazeela, “Asia’s ‘travel bubbles’ could change travelling post-pandemic”, 27 May 2020