ヴィーガンの妥協としてのシーガン

ベジタリアンの類型には、植物性のものしか食べないヴィーガン、肉以外(魚介類、乳製品、卵など)は食べるペスクタリアン、可能な限りで肉食を減らそうとするフレキシタリアン、哺乳類と魚介類は食べないが鶏肉は食べるポロタリアンなど枚挙に暇がない。

2019年はビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズなど植物性由来肉が欧米を中心に流行した。ヴィーガンが増えているのは事実だが、野菜を肉の味に似せようとする飽くなき努力は、それだけ肉が美味しいのを自覚しているからこその動きであり、宗教的な意味合いではなくファッションとしてのヴィーガンは無理しているケースも少ないだろう。(著名なヴィーガンが実は隠れて肉を食べていて炎上したケースなどは、まさにそれを象徴するだろう。)

また、徹底したヴィーガン食は栄養が不足しやすい。必須アミノ酸ということであれば、エンドウ豆が主成分のビヨンド・ミートより大豆が主成分のインポッシブル・フーズということになるが、タンパク質だけの問題ではなく、ビタミンB12など野菜だけでは摂れない栄養は多くある。

そんな中、次に流行すると言われているのがシーガン(seagan)である。シーガンはseafoodとveganの合成語であり、思想自体はシーガニズム(seaganism)という。植物と(持続可能な開発に配慮する形で漁・養殖された)魚介類を食べる事をいう。ペスクタリアンから鶏卵や乳製品を除いたものと考えれば良い。

英国最大のスーパーマーケットチェーンWaitrose & Partners(ウェイトローズ&パートナーズ)のFood and Drink Report 2019-20では、同社サイトでは、青のり(aonori seaweed)とシーガニズム(seaganism)についての検索が増えていることを主要な発見として示している。

参考:Waitrose, “Food and Drink Report 2019-20”

シーガン(seagan)という言葉を有名にしたのは、The Vegan Cheat Sheetの創設者でありフードライターであるAmy Cramer & Lisa McComseyによる2016年の“Seagan Eating:  The Lure of a Healthy, Sustainable Seafood + Vegan Diet”という書籍である。

純粋なヴィーガン食は制限が強く、摂取できない栄養が多いので、ω-3脂肪酸などが含まれる魚介類を食事に足すことは食事の多様性にも健康的にも良いという事を提案した本である。もっとも、ヴィーガニズムは環境や動物愛護にも関わってくるので、sustainable seafoodを加えるという条件となっている。

要するにヴィーガンの妥協であるが、よほど健康的であり同意も得られやすいので、新たなムーブメントになる可能性はあると考えられる。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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