インドにおける電子タバコ規制と問題点

インドは1億2000万人以上の喫煙者がいると言われ、中国の約3億人に次いで多い。一方でインドでは年間72万人の早期死亡者のうち13%がタバコに関連していると言われ、大きな問題となっている。

そこでフィリップ・モリスといった大手タバコメーカーは「安全」を売りにインドでの電子タバコの展開に力を入れようとしている。

とは言え、当サイトでもさんざん指摘している通り、電子タバコの「害」についての報告が続々と上がっており、インドの保健省は電子タバコの規制を推進している。

昨年2018年8月には各州政府に対して電子タバコの販売と輸入の停止を勧告しており、それを受けて少なくとも12の州で電子タバコ(専門用語としては電子ニコチン送達システム:Electronic nicotine delivery systems, ENDS)を禁止している。

禁止されている州にはムンバイを含むマハーラーシュトラ州など人口ボリュームとしても多く、かなり影響が大きい。

先日5月31日の「世界禁煙デー」にはインド医学研究評議会(ICMR)は、現在の科学的研究に基づいた白書を発表し、電子タバコの完全な禁止を勧告している。

その世界禁煙デーに先んじてニューデリーの非営利組織Consumer Voiceが行った調査では、 国内で36もの違法ブランドが電子タバコの製造・販売を行っていることが分かり、規制の進展と実態の乖離が指摘される。

もっとも、インドの保健当局の姿勢によってこのまま規制が進展すると言えない側面もある。というのも、電子タバコの輸入規制はWTO(世界貿易機関)のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)における「貿易差別」に抵触する可能性があると指摘されるからだ。

GATTでは、輸入品に対する扱いは、国内で製造された「類似製品」と同等の扱いが必要である。一般に電子タバコは形態も用途も紙巻きタバコと「類似」していると考えられる。

インドでは紙巻きタバコは多く製造されており、電子タバコの多くは輸入という形を取る。前者の製造・販売を認める以上、後者だけを輸入禁止にするのはGATT違反である可能性がある。

実際、同様の趣旨の内容をインドの通商省は文書で指摘しており、電子タバコを輸入禁止にする法的根拠が無い事を指摘している。

参考文献

DownToEarth, “World No-Tobacco Day: ICMR calls for ban on e-cigarettes”, 31 May 2019

Quartz India, “India has over 100 million adult smokers, yet it wants a safer alternative banned”, 22 May 2019

Business Standard, “36 e-cigarette brands illegally operating in India”, 30 May 2019

live mint, “12 states ban e-cigarettes, health ministry urges all to follow”, 13 May 2019

Reuters, “Exclusive: India trade ministry says no legal basis to ban e-cigarette imports – document”, 10 Apr 2019

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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