先日発表された2018年10月次点の日本の推計人口により、総人口が8年連続で減少して1億2644万3000人、減少数(前年比 26.3万人)・減少率(0.21%)ともに過去最大であった。また、生産年齢人口(15~64歳)の割合は59.7%と1950年と並んで過去最低であった。
将来的な人口減少は止まらないとする予測が多く、悲観的な論考も多く見られる。しかし、著名な経済学ブログMishTalkは、Financial Timesの記事をベースに(短いながら)興味深い指摘をしている。
政策研究大学院大学名誉教授松谷明彦氏によると、日本には多くの移民が来ている(国際的な定義では既に日本は移民大国である)にもかかわらず人口減少しているのは、出生数の少なさより死亡者数の多さに起因する。1年間で出生数が944,146人であるのに対し、死亡者数は1,368,632人である。そして日本の人口は100年以内に5,000万人に減少するという悲観的な予測が紹介されている。
そして、MishTalkではこの長期予測は大間違いであると言い、その理由として「この長期予測が正しいなら国債の山が大きな問題を引き起こし、デフレ問題ではなくインフレ問題が起こる」と述べている。
具体的にどのような予測を持っているかは書かれていない(コメント欄にも同様の質問が見られる)が、この指摘は一考に値する。
少なくとも、多くの人が人口の長期予測を信じていれば、(国内消化が殆どであるとは言え)政府債務残高がもっと大きな問題となるはずだという解釈できる。国債の償還が困難になれば通貨価値が下落してインフレに見舞われるはずだ。
それなのに、今の日本は寧ろ逆で「どうやってデフレを抜け出すか」というのをやっている。人口の長期予測に蓋然性があれば、こんな自体にはなっていないのではないかという指摘である。入管法改正など更に移民が増えることで人口減少が是正されると見込んでいるのかもしれない。
もっとも、これに対する反論もいくつか可能である。
- 市場は基本的に短中期で動いており、50年先など考慮していない可能性
- ロボットやAIなど生産性を飛躍的に向上させる技術の発展によって人口減少がそれほど大きな問題にならないと見ている可能性
など様々な反論が考えられる。とはいえ、長期予測と市場の状態の違いから考える視点は興味深い。
参考文献
時事ドットコム「総人口、8年連続減=生産年齢の割合過去最低-総務省推計」2019年4月12日
Mish Talk, “Japan’s Population in Record Decline: Startling Projections”, 12 Apr 2019