米国で家庭教師を仲介するheytutorが移民研究を整理することにより、米国における地域別の人種多様性などをスコアリングしている。
その過程で出された移民比率(全人口に占める外国生まれ人口の割合)のグラフ(下図)が非常に興味深い。
図の棒グラフが「外国生まれの人口」を、線グラフが「外国生まれ人口の割合(移民比率)」を表す。
2017年の国勢調査のデータでは、外国出身の人口は13%を超え、これは1960~1920年代のピークである13~14%に近い移民比率となっている。
この時代は1950年代のゴールドラッシュが終わり、南欧・東欧からのいわゆる「新移民」が多かった時代で、第一次世界大戦が終わる1918年頃までの米国の帝国主義を支えている。「新移民」と呼ばれるのは、当初のイギリスからの入植者を含む西欧・北欧系移民を「旧移民」に対する言葉である。
旧移民と新移民の時代の間に、アイルランド系移民や中華系移民(華僑)が多く入ってきた時代があるが、安価な労働者として入ってきたアイルランド系移民などと新移民が対立する流れが発生する。
その後、いわゆる中国人排斥や日本人排斥など移民バッシングが続き、1924年に成立した移民法によって、国別に厳しく移民の数が規制されることになる。上図で急速に移民比率が下がるのはこれに対応する。この時に日本人移民も規制される。
移民の規制が緩くなったのが1965年の改正移民法で、再び移民比率が上昇していき現在に至る。
この図と歴史から何が言いたいといえば、13~14%という移民比率に民族バッシングなどが爆発する閾値のようなものがあるのではないかということである。
今のトランプ政権は移民への反感など民族的な問題による反発で誕生した側面があるのは言うまでもない。対立の理由もテロ警戒などもあるが、世論調査では労働問題なども重要である。この点では英国におけるブレグジットの問題も構図が似ている。
理由といい、移民比率の状況といい、この数値に何らかの意味があるのではないかというのが筆者の仮説である。発想としては、ジニ係数が0.6を超えると暴動が発生しやすくなるといったものと同じである。
ブレグジットで問題となっている英国も移民比率が13.6%と米国と似た状況である。もっとも、他の国の移民比率なども調査する必要があるので、現時点では思い付きのレベルである。
参考文献[1]:heytutor, “The Most Diverse Cities in the United States”
参考文献[2]:United Nations, “Population Division”
参考文献[3]:世界史の窓