マレーシアのマハティール首相は、2020年から2021年にF1(フォーミュラ1)のマレーシアグランプリを復活させたいという意向を示した。
元々、マレーシアにF1を誘致したのは前回首相を務めていた時のマハティール氏で、マハティール首相主導による近代化の一貫として進められたセパン・インターナショナル・サーキットで、1999~2017年までマレーシアグランプリが開催された。(セランゴール州のセパンは、マレーシアのシリコンバレーと呼ばれるサイバージャヤがある地域である。)
2014年からの原油価格下落、2015年の1MDB問題の発覚などによるリンギット安を背景に不況入りしたマレーシアは、財政負担を抑えるために2017年でF1の開催を終了することになった。
しかし、皮肉にもマレーシアがF1で脚光を浴びるようになったのはマレーシアが不況入りしてからである。2014年から5年連続で年間チャンピオンに輝いているルイス・ハミルトンが所属するメルセデスAMGの正式名称はメルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツである。このペトロナスがマレーシアの国営石油企業であり、2010年から正式にF1チームに参戦している。
(冒頭画像に映っているのはペトロナス・ツインタワーである。)
このタイミングでのマレーシアグランプリ復活の意向は、ECRLの再検討を始めとした中国の一帯一路への反発を中心としたナショナリズムの意向もあるが、何よりも減税分の歳入を確保するためにペトロナスを上場させたいという意向が背景にあると考えられる。勿論、本人が言っているように観客動員など観光面や放映権料などの旨味もあるが、それは理由の一つに過ぎない。
ペトロナスガスやペトロナスケミカルなど関連会社は既に上場しているが、本丸であるペトロナスは未上場であり、以前から上場の意向を示している。
(最近はまたリンギット安基調があるが)政権交代以来、景気回復が顕著で、原油価格も回復してきており、更に一押しという形で絶妙なタイミングでペトロナスを上場させたいという思惑が見られる。
参考文献
The Edge Markets, “Dr M says F1 may return to Malaysia next year”, 18 Apr 2019