4月11日からインド総選挙が始まっている(5月19日まで地域別に7回に分けて開催)が、第1回の投票を終えた4月12日時点までの世論調査結果がまとめられたので、その内容を紹介する。結果としては、表題の通り、カシミール地方プルワマのテロによるパキスタンとの緊張関係によるモディ政権支持率の上昇効果が殆ど無くなったと言って良い。
左図が、2月1日から4月12日までの有権者の関心事に対する推移である。(Economic Times)
2月14日のプルワマでのテロ、2月26日のパキスタン・バラコットでの空爆を黄色の円で示している。
テロ前はもっぱら失業率(Unemployment:赤)が関心事であったが、テロによって大きくテロ攻撃(Terror attacks:水色)への関心が高まった。
空爆以降、しばらくはテロに対する関心が高かったが、その後緊張関係の軟化によって再び失業率が関心事項に戻っている。
それでも、テロに関心を持つ人は少し残っており、バラコットへの空爆について「聞いたことが有る人」と「聞いたことが無い人」別に、モディとラーフル・ガンディーのどちらが首相に相応しいかという質問に対しては、
・聞いたことが有る人:モディ(46%) – ラーフル・ガンディー(24%)
・聞いたことが無い人:モディ(32%) – ラーフル・ガンディー(24%)
と、空爆を知っている人の方がモディ首相を支持する人が多いことが分かる。
筆者としては、インドで空爆について知らない人が一定数存在するという情報格差に驚いているが、それはさておいて下図のモディ首相と、与党BJP(インド人民党)の支持率推移を見ると、全体としてもやはりテロと空爆の効果は殆ど消えてしまっていることが分かる。
また、地域別にはパキスタンから遠い南部地域は特にテロに対する関心が低く、やはり経済や国内問題に対する関心が強いという状況も分かっている。
全体として、テロによるナショナリズムを利用は北部の人を中心に効果があり、それは現在もある程度残っているが、全体としてはやはり失業率などが最大の関心事である。
参考文献
The Economic Times, “What’s on voters mind? Here’s what a CVoter poll says”, 20 Apr 2019