フレーミング効果と長期投資

フレーミング効果とは、実質的に同じ意味を示す選択肢であっても、質問の立て方によって意思決定が異なるという心理学や行動ファイナンスで使われる現象だ。例えば、

  • 50%の果汁入りのオレンジジュース
  • 50%の水入りのオレンジジュース

どちらかを選ばせれば、どちらも果汁50%のオレンジジュースであることには変わりないにもかかわらず、前者を選ぶ人が多いことが分かっている。(ここでは保存料などは考えていない。)

ValueWalk.comの創設者であるJacob Wolinsky氏は、最近のビットコインの上昇もフレーミング効果が働いていると指摘している。

2017年末にビットコインバブルが崩壊して以来、ビットコイン価格は下落し続け、2018年11月のハードフォーク以降は3,000ドル台まで下落しており、多くの投資家が見向きもしなくなっていた。

しかし、最近価格が上昇してきて5,000ドル台に達すると、多くの投資家がビットコインに群がるようになっている。つい最近まで多くの投資家が「5,000ドルの価値も無い」とみなしていたはずなのに、である。

これは同じ5,000ドルでも「急上昇している時は注目」し、「下落している時は見向きもしない」ということであり、テクニカル的にトレンドに乗っかっているだけという説明もできる。

Wolinsky氏が言いたいのはそういうことではなく、「急上昇している時は長期的な視点を無くしてしまう」ということである。代表的なのがドットコムバブル(ITバブル)で、当時、AmazonやApple株はドットコムバブルに乗って大きく上昇し、沢山の投資家がバブルに乗っかった。

しかし、バブルの崩壊とともに多くの投資家がAmazon株やApple株を手放してしまった。Amazonの株価はドットコムバブルの最高値でせいぜい105ドル程度、ドットコムバブルの崩壊で6ドル台にまで落ちたが、本当の勝ち組はITバブルに惑わされずに「eコマースの将来を信じて」Amazon株を持ち続けた投資家である。(2019年4月10日時点で1,835ドル台である。)

とは言え、こんな事はそう簡単にはできない。酷い場合は105ドルで買ったものが6ドルにまで下がっている人がいるわけだが、95%近く下落したものを持ち続けるというのはかなり根気がいる。持ち続けても化けるとも限らず、無謀な保有になるかもしれないからだ。

重要なのは、長期投資を行っているのか短期投資を行っているのかを自身で明確にしておくことで、更に言えば前者の場合は短期的な変動は気にしないことである。

参考文献

ValueWalk, “The Framing Effect And Bitcoin”, 9 Apr 2019

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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