観光ビザを解禁するサウジアラビアの狙い

9月初旬に報道されたように、サウジアラビアが本日9月27日に50ヶ国程度に観光ビザの発給が解禁される見通しである。カショギ氏の暗殺から1年、そして先日の石油施設へのドローン攻撃などサウジアラビア情勢を危惧する声は多いが、サウジアラビア自身は観光業の発達を重要な柱の一つとして位置づけている。

サウジアラビアは国家改革「ビジョン2030」に観光分野の発展を明記しており、国内に5箇所存在する世界遺産を中心に観光客を受け入れられるように整備を進めている。

今までも国際統計ではサウジアラビアには外国人観光客がいるということになっていた。但し旅行は旅行でも「メッカ巡礼」であり、国内旅行者などを含めてもGDPに対して観光が占める割合は3%にとどまる。ビジョン2030では、2030年までにGDPへの観光の貢献度を10%にまで高めることを目標としている。

「観光を重視」するというよりかは、正確には「石油依存経済からの脱却」を目的としている。サウジアラビアがアラムコのIPOを進めているのも、上場によって資金調達し、それを「石油以外の事業に投資」するのが狙いである。

ESG投資の流れやシェールガス革命、(経済的枯渇という意味での) 石油の埋蔵量の問題など、原油産業が盤石とは言い難い。

もっとも、ドローン攻撃による心理的インパクトは勿論、現地では当然アルコールは禁止され、女性の人権問題なども多くある。同じイスラム教国家であればハードルは比較的低いと思われるが、それ以外の国にとっては、その障壁をいかに下げられるかが問題である。

参考文献[1]:ジェトロ「サウジアラビアで観光ビザが解禁か」2019年9月10日

参考文献[2]:CNBC, “Saudi Arabia prepares to offer its first ever tourist visas two weeks after terror attacks”, 27 Sep 2019

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