緊急事態宣言を解除するのは感染拡大の可能性があるから

筆者は4月時点で緊急事態宣言の延長は1ヶ月と予想していたが、結果的には25日(3週間弱)に解除される見通しである。東京で緊急事態宣言をする時は1日の感染者数の目安が100人と言われていたのに、解除の目安が非常に厳しい(直近1週間の累積報告数数が人口10万人当たり0.5人程度以下)事にアンバランスさがあると思っていたが、少なくとも北海道と神奈川以外はその条件を満たしている。

先に言っておくが、筆者は緊急事態宣言の解除には賛成である。これ以上緊急事態宣言を伸ばしても経済的な影響によって余計に死者が出かねないと考えているからである。本稿は、なぜ神奈川と北海道が条件を満たしていないにも関わらず、このタイミングで解除するかという考察である。

それは「ここで緊急事態宣言を解除しないと解除するタイミングが当分先になってしまう」からである。ここまで順調に東京の新規感染者数は減少傾向にあったが、24日は14人と3日振りに二桁を記録した。

報道では「ゴールデンウィーク中の気の緩みによる感染再発」が心配されていたが、実際には新幹線や飛行機の人の移動などゴールデンウィーク中の人の動きはかなり少なかったことが予想される。

人の動きが明確に増えたのはゴールデンウィーク後、特に5月11日以降である。通勤者も格段に増えたし、空いている店舗も多くなった。筆者は定期的にいくつかの商店街や駅などの交通量や空いている店舗を観察しているが、今はスナックなど特定の業種以外は、よほど体力のある店くらいしか休業していない。

ゴールデンウィーク後の東京都の新規感染者数の推移を見ると、24日の14人というのは判断が微妙である。これだけ少し多いようにも見えるが、テクニカルチャートのように見れば反発の兆しにも見えなくない。

GW後の東京都の新規感染者数推移
出典:東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト

「今の感染者数は2週間前の状況」と言われるが、これは正確ではない。2週間というのはカレンダーでプロットした時に見やすいからであり、潜伏期間として集中するのは12日以内である。つまり正確には「今の感染者数は12日前の状況」であり、24日(検査のデータから言えば23日)の12日前と言えば11~12日とゴールデンウィーク明けで通勤者が格段に増えた時期と合致するのである。

さて、話は戻るが24日の新規感染者数の判断は難しい。反発しているようにも見えるし、これだけ飛び抜けて多いだけのようにも見える。もう少し様子を見るべきという考えもあるだろうが、もしこのまま増加するようならば緊急事態宣言を解除するタイミングが相当後ろにずれることになる。

欧米諸国も経済活動再開を進めている。このタイミングであれば多少感染者数が増加したところで、世界的な流れや経済的な影響などで説明することが可能である。今しかないというのが政治的判断ではないか。

尤も、これを執筆している2020年5月25日7時30分現在の話で、今晩飛躍的に人数が増えるようであれば見送られる可能性がある。微増くらいならばそのまま緊急事態宣言は解除されるのではないか。

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