新型コロナウイルスの検査結果について「14日間の隔離期間の後に陽性反応が出た」や「陰性になってから再び陽性になった」などといった情報を正しく理解できていない人が多いようだ。
米国内科学会の学術雑誌Annals of Internal Medicineに掲載された最新の論文では、潜伏期間の中央値は5.1日(95%信頼区間:4.5~5.8日)であり、97.5%の人は11.5日以内(95%信頼区間:8.2~15.6日)に発症すると報告されている。2.5%未満の人は2.2日(95%信頼区間:1.8~2.9日)以内に発症する。
11.5日だろうと14日だろうと何でも良いが、一般的な報道ではこの数字だけしか出てこないのが問題である。2.5%の人は11.5日以上の潜伏期間を持つ場合があるし、この11.5日というのも標本数の問題からバラツキが存在する。(同様の標本抽出をおこなった場合、95%の確率で8.2~15.6日の間に97.5パーセンタイルが位置するという意味だ。)
論文で示された新型コロナウイルスの累積分布関数が以下のグラフである。2.5パーセンタイル、50パーセンタイル、97.5パーセンタイルとその信頼区間は横線で示されている。大多数の人は11.5日以内に発症するが、僅かながら20日かかる人も存在する。別の中国研究者による報告では30日というデータもあったが、これは特別な例である。
「潜伏期間が11.5日」と言った時、あくまでも統計学的に蓋然性が高い数値を示しているに過ぎない。当然、14日隔離した後に陽性反応が出る可能性もある。
但し、上記報告によれば、14日以降に発症するのは101人に1人であり、14日以降に重篤な症状を示すのは10,000人に1人であり、14日の隔離は重症化する感染者を見逃してしまうリスクは非常に低い。
また、陰性になった後に陽性になるという例については、再発症もしくは再感染の可能性も当然あるが、偽陰性の可能性もあるだろう。
PCR検査の精度は30~70%など文献によって異なるが、いずれにしてもそれほど精度は高いものではない。だから日本では新型コロナウイルスに関してダイヤモンド・プリンセスの例などがそうだが、2回の検査が行われている。仮に70%の精度だとして、2回連続で間違える可能性は0.3×0.3=0.09で9%である。
91%は感染を見つけることができるわけだが、逆に言えば9%の確率で2度の検査で偽陰性(陽性なのに陰性と判断してしまうこと)となる可能性があるわけであり、決して低い確率ではない。「陰性だったのに陽性になった」というが、実はどちらも陽性だったという可能性は十分に考えられる。