高い上場初値が期待されるライドシェアLyftのIPO

要約

  • ライドシェアLyftのIPOに超過需要申告がある可能性が高い
  • 投資家心理にFOMOが働いている可能性
  • このようなケースの場合は高い上場初値が期待できる

ロードショー2日目でLyftのIPOは超過需要申告(REUTERS)

  • LyftのIPOの需要申告は調達目標額である230億ドルを上回る可能性が高い
  • Lyftは月曜日からIPOのロードショーを開始している
  • 仮条件は1株62~68ドルで、3月28日に公開価格が決定する予定
  • LyftのIPOの良い状況が4月にIPOを開始するUberにも好影響を与える可能性がある
  • Uberの多様な戦略に対し、Lyftは投資家に事業の単純さをアピールしている

解説

Lyftはアメリカとカナダでしか展開していないので日本ではあまり有名ではないが、Uberと並んで注目されるライドシェア企業である。Uberの筆頭株主がソフトバンク・ビジョン・ファンドであるのに対し、Lyftの筆頭株主は楽天と日本製からの出資が目立つ。

Uberはライドシェアだけでなくハイヤーや宅配サービスなど多事業展開を重視しているのに対し、Lyftは配車サービスに特化しているのが特徴である。

記事の通り、IPOのロードショーでは需要申告超過(oversubscribed)されており、資金調達目標額である230億ドルを上回る可能性が高い。

この理由についてロイター通信は、2017年Snapchatなどを提供するSnapのIPO以来の大型のテックIPOを見逃してしまうことを恐れているという見方を示している。これはFOMO (fear of missing out)のことで、最近はSNSや仮想通貨のICOで言われることも多いが、機会損失を恐れる不安心理、取り残される不安心理から投資に走ってしまうセンチメントのことを指す。こうした状況が発生している場合、上場初値が公開価格を上回るケースが多いので、期待できるだろう。

そもそも多くのIPOが公開価格より上場初値の方が高いケースが多いが、この理由について有名な説明の一つがRock(1986)による逆選択モデルである。(最近は行動ファイナンスによる説明も多い。)

ここでは発行株式に関する完全な情報を持つ投資家(the informed)と、それ以外の情報を持たない投資家や引受人など(the uninformed)が存在し、両者に情報の非対称性があると想定される。そしてIPOには割安な「良い発行(good issues)」と割高な「悪い発行(bad issues)」が混在しているとする。

この時、情報を持つ投資家は良い発行にだけ参加し、情報を持たない投資家は良い発行にも悪い発行にも同様に参加することになる。そうすると、情報を持たない投資家は割高な「悪い発行」にばかり割当を受けることになる。

実際、こういうことは筆者の経験的にも分かる。IPOに参加したいと思えるような優良株では滅多にIPOに当選しないが、(どことは言わないが)目に見えて分かるクソ株の場合は証券会社から勧誘の電話がかかってくることさえある。だから筆者の個人的な判断基準としては、電話が掛かってくるようなIPOはまず回避する。

しかし、こういう状況が続けばIPOの参加者自体が減少してしまう。そこでRockの議論では、「IPOの期待収益率がプラス」であれば、情報を持たない投資家にもIPOにも参加してもらえる。要するに、公開価格を平均的には低く設定するインセンティブが働くというものだ。

Lyftのケースの場合、クソ株ケースにおける心配は少なく、需要申告も多いようなので、かなり期待できるのではなかろうか。

参考文献

REUTERS, “Lyft’s IPO oversubscribed on road show’s second day: sources”

Rock, Kevin. “Why new issues are underpriced.” Journal of financial economics 15.1-2 (1986): 187-212.

追記(2019年3月28日)

公募価格帯が70~72ドルに引き上げられました。

Bloomberg, “Lyft Raises Its IPO Target, Aims to Raise as Much as $2.2 Billion”

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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