日本の緊急事態宣言が遅れた理由を擁護する

日本政府が7日に緊急事態宣言を公布し、7日に施行される。専門家会議の中からは3月末時点で出すべきという意見があり、「4月1日説」が広く信じられてネット中を駆け巡ったように、それから1週間経っての宣言は遅いという意見が多い。

遅かった理由については、東京都の新規感染者数が100人を超えるのを待っていた、100人を超えて更に東京の延感染者数が1,000人を超えるのを待っていた、あるいは経済団体や業界団体が止めたなど様々な解釈が考えられる。しかし、理由はもっと単純だ。「緊急経済対策とセットにして宣言するため」である。

そもそも安倍首相が3月28日に行った記者会見では「10日程度のうちに取りまとめて速やかに国会に提出したい」ということであった。今日4月7日はちょうど10日目である。

NHK「安倍首相 「リーマン時上回る緊急経済対策 10日程度のうちに」」2020年3月28日

緊急事態宣言を発令するのに、セットとなる対策が存在しないのはあまりにもブサイクである。4月1日に緊急事態宣言を発令しておいて、「緊急経済対策は1週間後です」となれば野党やマスコミに叩かれるのは必至である。そうすると、4月1日説はいかにも尤らしい噂ではあったが、最初から4月7日が予定であったのではないかと筆者は考えている。

では緊急経済対策に何故これほどの時間がかかったのか。それは「金額をできるだけ大きく見せるため」である。お肉券やら旅行券など色々と批判が出ているが、これらは実現したとしても新型コロナウイルスが収束した後の話である。

政府が定める緊急経済対策には2段階なり3段階なりの「ストーリー」があるわけだが、その後半は「収束後の戦略」である。

TBS NEWS「政府、緊急経済対策案まとめる 7日に閣議決定へ」2020年4月6日

緊急経済対策なのだから、本来は目下の対策をできるだけ早く行い、倒産や破産を可能な限り防ぐのが重要である。しかし、経済対策の真水分まで考慮すれば、直近の対策だけのパッケージをまとめると金額が諸外国と比べてしょぼく見えてしまう

収束後までをまとめることで「108兆円の緊急経済対策」、海外なら”stimulus package worth one trillion US dollar”とインパクトのある数字で報道されるわけである。

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