米国で国家レベルの銃規制が困難であることの本質はロビー活動ではない(2)

前回:米国で国家レベルの銃規制が困難であることの本質はロビー活動ではない(1)

前回は憲法的な観点から、米国で国家レベルの銃規制が難しい実態を論じた。修正第2条で基本的人権として武装が認められている限り、本質的な銃規制は困難である。

それでも、国民の賛同があれば国家レベルでの銃規制が可能と思うかもしれない。しかし、米国の世論を見れば、銃規制の強化に対する賛同は高まっているものの、多くの国民は銃保有の権利自体を尊重しており、国レベルでの本質的な銃規制は難しいことには変わりがない。

ギャラップ社の世論調査によれば、米国で銃が存在する家庭は43%である。個人で銃保有をしているという回答は30%にとどまるが、4割強は家庭に(自衛などの目的で)少なくとも1丁以上の銃が存在することになる。

参考文献:Gallup, “Guns”

長期的な傾向で見れば、同時多発テロ事件までは銃保有率の減少傾向があったが、それ以降は微増傾向にある。

米国で銃が存在する家庭に住む人の割合
出典:Gallup

もっとも、銃保有に対しては党派性が強く、平均でこそ43%だが、共和党支持者は61%が銃がある家庭に住み、民主党支持者は28%しか銃がある家庭に住んでいない。

但し、銃規制に対する考え方は変化が見られる。下図は銃規制について「厳格化」(More strict)、「現状維持」(Kept as now)、「緩和」(Less strict)それぞれの回答の割合を示したものである。

2012年頃までは「現状維持」の意見が増えており、「厳格化」の論調は下落傾向にあった。2012年以降にトレンドが反転しているのはオバマ政権のスタンスやヘイトクライムに対する反発などの影響が強いと思われる。

最新の調査でも61%が銃規制強化に賛成しているが、それでもブレイディ法が成立した1990年代前半よりも賛同する人の割合が低く、ムーブメントとしてはまだまだ弱いと思われる。

ましてや「警官などを除く銃保有の禁止」に対する意見を問えば、下図の通り「反対(銃保有を禁止するべきではない)」という意見が多数で、最新調査(2018年)では71%である。

銃保有を禁止する法律を制定すべきか
出典:ギャラップ社世論調査の表より筆者作成

しかも、最近は高止まりしているが、長期的には反対者の割合は年々増加傾向にある。これは、銃規制に対する議論が高まり、銃規制強化に賛同する人が増えることと並行しており、

  • 銃規制強化
  • 銃保有権利の死守

の両方に賛成している人が多いことを意味する。前回論じた通り、修正第2条の基本的人権に関わる内容であるからこその世論である証左だ。

となると、銃規制と言ってもできることが限られてくる。銃規制で最も有効なのは銃を売らないことであるが、憲法とこれらのデータから見れば、その選択肢は現時点では現実的にほぼ有り得ないことになる。

ブレイディ法のような販売期間の猶予やバックグラウンド・チェックもできない米国で、どんな本質的な銃規制ができるというのだろうか。

前回:米国で国家レベルの銃規制が困難であることの本質はロビー活動ではない(1)

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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