博士人材は何を求めているか:JGRADを用いたキャリアパス等に関する意識調査

文部科学省の国立試験研究機関である科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が2018年10月に博士人材データベース(JGRAD)を用いたアンケート調査を行った。

JGRADは、NISTEPが2014年より整備を進めている情報基盤プラットフォームで、2018年10月時点で全国国公私立43大学(2019年5月時点で46大学)が参加している。

参考:JGRAD:博士人材データベース

データベースには以下のような情報が登録されている。

  • 個人の基本的な情報
  • 大学院以降の学歴情報
  • 大学院入学前/後の就業情報
  • ご自身が受けた国の支援制度等について
  • 研究関連活動
  • 研究成果

アンケート調査の回答者内訳は以下である。大学院後期博士課程の進学率の男女比(おおよそ2:1)に比べて男性に偏るなどサンプリングバイアスはあるが、国籍や専攻分野、就業機関別にデータがあり、個別のデータを見ていけば有用であると思える。

回答者の内訳
出典:三木(2019: 4)

こうした状況から、筆者としては簡単な要約図表よりも、個別の属性別データを見た方が有益と思われるので、重要と思えるものをピックアップして見ていく。

研究者との交流と語学力の重要性

博士課程在籍時の経験と就職後の現在の業務との関係性を見るために、「現在の業務に役立っている経験」と「博士課程在籍時にもっと経験して おくべきだったと考える経験」を3つまで選択回答が求められた。

以下は、就業機関別に「現在の業務に役立っている経験」についての回答を見たものである。就業機関を問わず「異分野研究者との交流」が最も役立つという回答が多いのが特徴である。公的機関の場合は「研究関係者との交流」も重要であり、職業の特性が出ているように思える。

所属機関種別の、現在の業務に役立っている経験3つ(修了者)
出典: 三木(2019: 9)

一方で、所属機関別に見た「もっと経験しておくべきだったと思う経験」については、いずれも「語学力向上カリキュラム」の回答が最も多い。筆者の主観では、これは読み書きよりも「会話」を指す場合が多いように思える。論文の読み書きについてのトレーニングは多く受けて相対的に見て高い能力を持つ人が多いが、国際的な学会での発表や留学など、会話がネックになる人はよく見かける。

所属機関種別の、もっと経験しておくべきだったと思う経験3つ(修了者)
出典:三木(2019: 9)

民間企業と公的機関については「研究関係者との交流」や「各界で活躍する人々との交流」が多いのも特徴的だ。これも閉じ込もりがちな大学の場から「一般」社会に出た時のギャップや、業務においてコネクションの不足を痛感するケースなどが考えられる。

研究第一の人が多い

次が 職業選択の観点である。設問としては 「就職または転職にあたって最も重視した観点 」について集計されている。

最初の図は、所属機関別に見たものである。大学および公的機関で職を得た人は「研究を続けられる」「研究に関する自由度が高い」ことを優先した人が多い。アカデミックなポストはなかなか空かず、不安定な特任教授や非常勤講師などを選択するケースも多く見られるが、それも「研究第一」の姿勢が強いからである。

一方で民間企業に就職した人は、「創造性が高くイノベーティブ」や「博士課程の研究テーマと関連」など強みを活かせたり、応用性を意図したといった傾向が強く見られる。

所属機関種別の、就職または転職で最も重視した観点(修了者)
出典:三木(2019: 12)

次の図は、同じ設問を男女別に集計したものである。「研究を続けられる」がどちらも圧倒的に多いのは同じだが、「研究に関する自由度が高い」と「社会に貢献できる」では顕著な性差が見られる。

男女別の、就職または転職で最も重視した観点(修了者)
出典:三木(2019: 12)

以上、紹介したのはほんの一部である。他にも、

  • 外国での研究意向の強さとその背景
  • 進学理由
  • 希望の進学・就職先
  • キャリア形成で身につけたいこと

など属性別に多くのデータが掲載されている。

参考文献

三木清香「博士人材データベース(JGRAD)を用いたキャリアパス等に関する意識調査-JGRAD アン ケート 2018 結果報告-」,NISTEP RESEARCH MATERIAL,No.281,文部科学省科学技術・学術政策 研究所. DOI: https://doi.org/10.15108/rm281

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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