短時間の有酸素運動がゲームのパフォーマンスを向上させる可能性

eスポーツをスポーツと呼ぶことに異論がある人が「従来型スポーツ(conventional sports)」(野球やサッカー、陸上競技など)のファンから多く出る。少なくとも動体視力などスポーツと共通する多くの能力が必要であり、ESPNでeスポーツのチャンネルがあるなど、実態としてはスポーツであり、今後ますます市場は伸びるだろう。

eスポーツがスポーツであるならば、その訓練を才能と努力だけに依存せず、科学的なトレーニング法の確立は重要である。既にeスポーツ専門の講座や学校なども存在するが、この分野に関するトレーニング法についての研究は、(認知機能の向上など周縁的な研究は多く存在するものの)まだ始まったばかりと言って良いだろう。

そんな中、カナダのマギル大学の研究者がMedicine & Science in Sports & Exerciseに掲載した論文は、短時間の有酸素運動がテレビゲームのパフォーマンスを引き上げるという内容で興味深い。論文自体は有料なので、ここではエッセンスだけ紹介する。

de Las Heras, B., Li, O., Rodrigues, L., Nepveu, J. F., & Roig, M. (2020). Exercise Improves Video Game Performance: A Win-Win Situation. Medicine and science in sports and exercise.

論文では、20人の若いテレビゲーマーに対し、リーグ・オブ・レジェンド(LoL)を使って実験が行われた。実験では、2日間に渡り無作為に、ある時は「ゲームの前に休憩」、ある時は「ゲームの前に短時間の激しい有酸素運動」を行い、その後のゲームのパフォーマンス(ターゲットの撃破数)が測定された。同時に、各プレイヤーの運動能力や運動に対する認識、運動後の心理的な変化なども計測されている。

分析により、安静時の撃破数121.17に対し、高強度の有酸素運動により121.17まで向上することが確認された(p=0.027)。更に有酸素運動は攻撃精度も高め、1つのターゲットを撃破するのに、安静時2.44回に対し、運動後は1.39回に改善している(p=0.007)。

全体としてゲーム前の有酸素運動は、安静時に比べて17%の正の効果をもたらしており、有酸素運動は15分で良く、その効果はプレイヤーの運動能力や運動に対する意識に限らないということが分かっている。

なぜゲームのパフォーマンスが向上するか、他のゲームにも一般的に適用可能なことかについては今後の研究が必要と述べられているが、仮説としては他の研究と同様、短時間の有酸素運動によって認知機能が向上するのではないかと考えられている。

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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