マレーシアに米が出てくるATMが登場:ザカートとイスラム金融

要約

  • マレーシアは積極的にザカートを集め、分配する仕組みの実施を進めている
  • カード式の米分配ATMがマレーシアのモスクに初めて導入された
  • ザカートはイスラム金融においても必須の概念

宗務大臣ムジャーヒドは、MAIWPは今年は7.1億RMのザカートを集めることを目指すと発言(Malay Mail)

  • 連邦直轄領イスラム宗教評​​議会(MAIWP) は2018年は6.5億RM(175億円)のザカートを集めた
  • 2019年は7.1億RM(191億円)のザカートを集めることを目標
  • ザカートの配分のための様々なプログラムを実施し、年間2~4%の貧困削減が目標

マレーシアのモスクが貧困者に役立つ「米のATM」を稼働(Channel NewsAsia)

  • MAIWP傘下の連邦直轄領イスラム宗教委員会(JAWI)がモスクにマレーシア最初の米ATMを導入
  • イスラム法に基づく喜捨(ザカート)の受益者のために利用される
  • カードをタッチすると2kgの米が分配される仕組み。現金による寄付も可能

解説

イスラム教の義務「五行」の一つにザカート(zakat)があり、これは一般的に「制度喜捨」と呼ばれるものである。収入の一定割合を寄付することなどを含み、イスラム法における再配分として重要な概念の一つである。

その再配分の方法の一つが2つ目の記事の「米のATM」である。下記画像の通り、巨大な米びつのようなものにタッチパネルがついており、ザカートの受益者が持つカードをタッチすれば米が2kg出てくる仕組みである。今回、マレーシアのモスクに初めて導入され、今後広がっていく予定である。

マレーシアの米のATM
出典:BANZNAS

驚くような仕組みではないが、慈善事業もコストがかかるので、効率的に行う方法は求められるので、投資という観点ではまだまだビジネスチャンスが転がっているようにも思える。

それとは別に、なぜこれらの記事を取り上げたかというと、イスラム金融においてもザカートは非常に重要な概念であるからだ。イスラム金融では直接利子を取ってはいけないし、固定的な義務も課してはならないし、不確実性も極力排除しなければならない。しかし、何らかの形で利子などに該当するものを金融スキームに組み込まなければならない。

その時に度々登場するのがザカートである。例えばイスラム金融における保険「タカフル」においては、保険加入者が被害に遭った時、保険金に該当する名目で支払われるのがザガートである。この意味で、単に宗教的な意味合いだけでなく、金融としても必須の知識なのである。

参考文献

シャーリザ・オスマンら(2017)『イスラム金融の基礎 入門編』日本マレーシア協会

Malay Mail, “MAIWP aims to collect RM710m zakat this year, says Mujahid”

Channel NewsAsia, “Malaysia mosque launches ‘rice ATM’ to benefit the needy”

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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