オフショアからミッドショアへ:ラブアン島の金融センター

マレーシアのオフショアとして有名なラブアン島(香港より少し大きい島)の金融規制当局がMarket Report 2018を公表し、それに関してGULF TIMESがミッドショアという概念を用いて論考を書いている。

ラブアン:アジアで見過ごされているイスラム金融成長ストーリー(GULF TIMES)

  • ラブアン島:1990年にラブアン国際ビジネス金融庁(IBFC)が設立して以来、マレーシア唯一のオフショアとして多くの外国企業が集まる
  • タックスヘイブン規制に応じて、IBFCはオフショア(offshore)という用語を廃止し、顧客の機密性と厳格な規制要件のバランスを取ったミッドショア(midshore)金融センターとしての地位を確立
  • イスラム金融やイスラム企業のハブとしても成功
  • ラブアンの金融規制当局は今後もイスラム金融市場とハラール経済へのエクスポージャーを強化する方針
  • 物理的に支店を作らなくてもラブアンでイスラム銀行を営業でき、ラブアンの金融規制当局に認められれば、マレーシアのどこにでも事務所を開設できるなど柔軟性を持つ

補足

オフショアというとタックスヘイブンのイメージが強いが、その中でマレーシアのラブアン島は新しい用語である”ミッドショア”(midshore)を用いて、その地位を確立しており、シンガポールや香港を補完する金融センターの地位として注目されている。

この記事ではイスラム金融が主眼に置かれているが、最後の「物理的に支店を作らなくても営業でき、更にマレーシア本土に事務所を開設できる」というのは、イスラム金融に限らずマレーシアに進出する企業にとって魅力的な仕組みの一つである。

イスラム金融センターとしては、ラブアン島はこの仕組みを利用した「投資の呼び水」として機能していくと思われる。というのも、マレーシアは国としては本土にASEAN第一のイスラム金融センターの設立を目指しており、既に多くの投資が集まっている。

一方で、ラブアン島でのイスラム金融機関の資産規模は限定的になると考えられる。確かにラブアン島のシャーリア準拠の資産は、2014年に16億ドルだったのに対し、2018年には32億ドルと倍増している。

しかし、ラブアンの金融機関の総預金のうち、イスラム金融が占める割合は2.2%と非常に少ない。マレーシア本土やインドネシアなどの主要な金融機関(うち通常の金融機関とイスラム金融機関を両方経営する企業)を見てみると、現時点でイスラム金融が占める預金割合は5~20%というケースが多く、まだまだ話にならない水準である。

参考文献

GULF TIMES, “Labuan: Asia’s overlooked Islamic finance growth story”

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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