しばらく前のロイター通信の記事だが、当サイトで注目しているレバレッジド・ローンに最近流行りのESG投資を適用せざるを得なくなってきている状況について論じられている。
レバレッジド・ローン投資家がプライベートエクイティにESGを押し付けている(Reuters)
- 債券投資家がサステナビリティ基準を利用するようになるにつれ、プライベートエクイティ企業はESG基準を促進するように圧力を受けている
- レバレッジド・ローン市場でのESG基準の利用は始まったばかりで多くの中堅企業にESGスコアは存在しない
- プライベートエクイティファンドの多額のドライパウダーの消化に苦労しており、独自の緩いESG基準を利用して問題を回避しているのが現状
- 2018年3月以降、欧州ではESGに基づくCLOファンドが少なくとも4つ設立され、ネガティブスクリーニングを利用している
- BNPパリバ、INGグループ、HSBCはESG投資へのシフトの最前線におり、今後レバレッジド・ローンにESG基準を適用することが増えていくと考えられる
補足
最近の注目すべき潮流である、
- レバレッジドローン
- ESG投資
- プライベートエクイティ
全部盛りである。IPOよりプライベートエクイティからの資金調達を目指す企業が増えており、そして資金調達の方法としてレバレッジド・ローンが選ばれることが多く、今後の大きなリスクの温床だと考えられている。
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そして多くの債券投資家が流行しているESG投資の考え方を取り入れており、出資先のプライベートエクイティにもESG投資基準を満たすように迫っているというのが話の筋である。
しかし、少しずつレバレッジド・ローンの投資先が無くなっている中で、厳格なESG投資基準を適用することができないという実態がある。厳格に適用するとプラスチック包装会社にも投資できないことになり、1.54兆ドルにも達するプライベートエクイティ企業の「ドライパウダー」(資金調達したもののまだ投資に回せていない資金)を消化できなくなってしまう。
とは言え、ヨーロッパを中心にレバレッジド・ローン市場でもESG投資の流れは着実に進んでいき、今後もその流れは止まらないと予想されている。
筆者としては、ESG投資の流れがレバレッジド・ローン市場にとどめを刺さないかが心配である。
参考文献
Reuters, “Leveraged loan investors push private equity firms on ESG”, 24 Jun 2019