投資家と新型コロナウイルス

ネットで有名な論客を見ていれば、新型コロナウイルスへのスタンスは両極端である。一方では藤沢数希氏のように新型コロナウイルスのウイルスを恐ろしさを強調して強力なロックダウンなどによる封じ込めが必要という人もいる。対して池田信夫氏のように経済活動をストップさせて自殺者が増える方がよほど多くの死者を出る、として騒ぎすべきではないという人もいる。

筆者も本音では(BCG仮説はどうかは疑問が残るが)池田氏のように騒ぎすべきではないというスタンスである。失業率が自殺者数に大きな影響を与えているのは確かであり、新型コロナウイルスの死者だけを殊更大きく取り上げて「自粛ムード」を強めることには大きな疑問がある。それでも投資家としては深刻視している。新型コロナウイルスについての意見を読む時(新型コロナウイルスに限らないが)は「それがどういう立場で書かれているか」をよく考えなければならない。

筆者は社会全体を考えた時、ロックダウンは悪影響の方が大きいと考える。敢えて経済活動への影響を最小限にして行動を抑制するなら、政治的な配慮で生産年齢人口の動きを止めるのではなく、新型コロナウイルスのリスクが高い高齢者を家にいさせろと思う。その方が経済活動への影響は小さい。

個人的にも新型コロナウイルスは怖くない。20~40歳の死亡率は0.2%であり、筆者は基礎疾患も無ければ喫煙もしないからだ。

ドイツのガンゲルトでの抗体検査によれば、既に15%の人が感染済みであり、それを考慮した死亡率は0.37%であり、ドイツでの公表されている全体の死亡率よりも遥かに小さい。これは想像以上に多くの人が「無症状感染」しており、他の国でも実態としては死亡率がもっと低いかもしれないからだ。そうだとすると、私が新型コロナウイルスで死ぬ確率はもっと低い。そんな死亡率に怖がっていれば生活できない。

しかし、投資家として見れば恐ろしい。多くの人々はスウェーデン方式のように割り切って考えることはできないのは分かっており、今の状況に加えて原油価格の低迷が続けばレバレッジド・ローンをきっかけとする世界恐慌も起きかねないと考えているからだ。最も悲観的に考えれば「スペイン風邪・金融恐慌・世界大戦」の歴史も想起させる。

つまり、筆者の中でも「社会的なリスクは実はそれほど大したことはない」と考える自分もいれば「金融恐慌にまで至れば大変なことになる」と考える投資家としての自分もいるわけだ。当サイトは投資家向けなので、主に後者のスタンスで記事を投稿しているが、世の中の多くの論者も立場によって意見は変わるだろう。

だから、何かを読む時は書き手の立場を考慮しなければならない。そして立場が違うのに意見が異なる相手に論争を挑んでも話は噛み合わないだろう。

そんな私でも、以前よりも念入りに手洗いをするようになったし、職場ではマスクをし、こまめにアルコールで手を消毒している。筆者の属性においては感染症としては「重い風邪」くらいのものであるが風邪で寝込むのは嫌だからだ。マスクをしていないからと言って誰かに絡まれるのは勘弁だし、もし無自覚のうちに誰かにうつしたら、マスクや消毒をしていなかった事で責任を追及されたくないからである。

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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