やれ緊急事態宣言だのやれロックダウンだのと言っている(後者は某都知事が言っているだけだ)が、新型コロナウイルスに対する日本の取り組み方はスウェーデン方式と変わらない。
ここで便宜上筆者がスウェーデン方式と呼んでいるものは、「極力経済活動を抑えず、集団免疫が成立することによる収束を待つこと」である。
インペリアルレポートなどの予測モデルによれば、ロックダウンで一時的に収束しても、ロックダウンを解除すれば再び感染は拡大していく。医療崩壊を起こさないように基本再生算数を低く抑える必要があるので、その対策は長期化することが予想され、その間の経済への影響は非常に大きい。
いくら新型コロナウイルスによる死者が抑えられても、倒産や破産で自殺者が増えれば元も子もない。ある程度の死者を覚悟し、全体として死者を抑えようというのがスウェーデンの取り組み方だ。ブラジルも似たようなやり方である。
感染症法に基づく交通封鎖など一部の法令を除き、日本の法律的に強硬なロックダウンなどができないということもあるが、現実的には日本も同様のやり方である。
「休日の外出自粛要請が出ているではないか」と思うかもしれない。確かに観光業・飲食業などには甚大な影響が出ている。休日の人の移動は7割ほど減ったという調査結果もある。
しかし、肝心の平日の電車通勤は相変わらずである。時差通勤やテレワークが多少は行われているが、Googleの調査では1割程度しか人の移動は減っておらず、混雑している路線は未だ多い。
「休日の外出自粛」については多くの国民が守っているものの、日数からして5/7はあまり変わらない状況であり、これでは止まる感染も止まらない。
マスコミなどでも通勤電車についての報道は殆どされない。最近は電車も窓が空いていることは多いが、「寒い」と言って締めて回る爺さん婆さんをよく見かけるし、どこまで「三密」を排除できているか疑わしい。
緊急事態宣言が遅れた理由については、やまもといちろう氏は以下のようにJR東海への配慮ではないかという見方を示している。その根拠は不明だが、ストーリーとしては有り得るだろう。
JR東海の葛西敬之さんら日本会議メンバーと目される面々が非常事態宣言などとんでもないという話を官邸に持ち込み、実質的に長寿安倍政権の後ろ盾になっているこれらの財界人が強く緊急事態宣言早期発布に反対した、と見るのが妥当でしょう。
やまもといちろうオフィシャルブログ「西村康稔コロナ担当相が、太平洋戦争末期の大本営みたいなことを言ってる件で」
政治的な影響力が強い高齢者に配慮し、公共交通機関や通勤先に配慮し、結果的に経済的にも政治的にも影響力が小さい若年層を批判の矛先にしていれば、被害は一部の業種に限定される。
部分的には自粛という形で経済活動が抑制されているが、基本的には普段マスコミが大好きなスウェーデン方式である。国民の良心に従って一部の人が犠牲者となっているが、基本的には集団免疫が成立するまでこの方式が続くのだろう。
それでも、「経済活動をあまり抑えずに少数の人や産業を犠牲にして集団免疫を成立させる」と公言すると世間の批判が大きい。実際、英国のボリス・ジョンソン首相も最初はこの方針だったが、国際的な批判でロックダウン方式に転換した。(本人の状態が非常に心配である。)
スウェーデンやブラジルのように開き直っている国もあるが、全体的に少数派である。しかし、日本も表面上は緊急事態宣言・自粛要請という形を取っているが、実態としてはスウェーデン方式と殆ど変わらない。政策的に非常に巧妙なやり方であろう。