クレジットカード会社はなぜ消費税増税時にポイント還元ではなく値引きを行うのか

消費税増税時のキャッシュレス決済によるポイント還元策に向け、QR決済サービスが高いポイント還元率によって顧客囲い込みを進める中、クレジットカード5社(JCB、クレディセゾン、三井住友カード、三菱UFJニコス、ユーシーカード)もカード決済利用時の対応について報道された。

参考:SankeiBiz「カードも実質値引き実施 増税のポイント還元」2019年8月26日

報道によると、三菱UFJニコスの一部ブランドを除いて、クレジットカード請求時にポイント還元分の金額を請求時に差し引く(実質値引き)による対応が行われる。

ポイント還元ではなく実質値引きによる対応の背景について、ニッセイ基礎研究所がコラムでわかりやすく説明している。要点は以下の3点である。

  • 消費者側にはポイント失効リスクをなくせるメリット
  • 店舗側は少額決済にもキャッシュレス決済が普及する可能性
  • 一部の消費者は保有ポイントの移行サービスを利用できないことに不満を感じている可能性

クレジットカードでもポイントカードでも、ポイント失効率というのは極めて重要である。

筆者はケチなので継続的に利用しているサービスのポイントを失効させたことは無いが、一般的には一定の割合でポイント利用を忘れて(もしくは無視して)失効するものである。

合理的な算定基準 (過去のポイント失効率) をもって将来の支出の見積もりとして負債計上(引当金)するという意味で、通常、家電量販店の財務諸表などではポイント利用の見込み金額を以下のように計上している。(成田, 2009)

$$ポイント引当金=ポイント残高×(1-ポイント失効率)×1ポイント当たりの単価$$

消費者として注意しなければならないのは、例えば「ポイント還元2%」という言葉があった時は実質的には2%の割引ではないということだ。

仮に10,000円の買い物をして200円分のポイントがついた時、通常は次回購入以降でしかポイントを利用することができないので、次回にちょうど200円の商品を買ったところで、10,200円分の商品を10,000円で手に入れたに過ぎない。また、ポイント失効率を考慮すれば、

$$実質的なポイント還元率=\frac{10000}{10200}×(100-ポイント失効率)≦1.96$$

と、全くポイントを失効させなかったとしても1.96%である。ヨドバシカメラの10%ポイント還元も実質的には9.1%である。

では、クレジットカードの場合は消費税還元を値引きで行うので消費税が一方的に得かと言えばそうではない。最後の指摘である「一部の消費者は保有ポイントの移行サービスを利用できないことに不満を感じている可能性」が最も重要である。

筆者も一部の消費者に入るが、多くのクレジットカードは何らかのポイントサイトと連携しており、他のポイントに移行できることで、1ポイント=1円以上の価値となる。

例えば、筆者が利用する三井住友カードのVPASSなら、楽天ポイントカードやiDなどへの充当レートは1ポイント=5円の計算である。

もっとも、政府による還元以上のキャッシュバックをもたらすことがないようにするための対策だとは思われる。

同様のケースでは、楽天を経由してふるさと納税をした場合に楽天スーパーポイントがつくケースがあり、そちらは現時点(2019年8月31日)では一部(金券類など)を除いて対策されていないようだが、そちらは大丈夫なのだろうか。

参考文献[1]:ニッセイ基礎研究所「政府のポイント還元策に「割引」還元で対応するメリット-参加者のメリットを大きく左右する「ポイント失効率」の存在」2019年8月30日

参考文献[2]:成田礼子. “業種に特有な会計及び税務処理シリーズ (第 2 回) ポイント引当金の会計と税務.” 税経通信 64.6 (2009): 205-211.

       

この記事の著者 HAL について

金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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