豚コレラと米中貿易戦争でベトナムと中国の豚肉価格が乖離

2018年8月頃からの中国で、2019年2月頃からのベトナムへの広がりなどアフリカ豚コレラの問題によって豚肉価格に大きな影響を与えている。

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中国でもベトナムでも供給不足であることには変わりがないが、そこに米中貿易戦争が絡んでいるので、鞘取りの動きがあるようだ。

ベトナムの貿易業者にとって中国の豚肉価格の上昇は魅力的(VN Express)

  • 1~8月のベトナムの対中食肉輸出は前年比3.6%増の4億4,900万ドル
  • 豚肉価格は中国では3.7ドル/kgなのに対し、ベトナムでは2.2ドル/kgと43%もの差
  • ベトナムの貿易業者は中国への輸出を伸ばして鞘取りをしている
  • 中国は貿易戦争を理由に米国からの豚肉輸入14,700トンをキャンセル
  • 中国の豚肉価格は今後数ヶ月で昨年から70%上昇する見込み
  • ベトナムでも豚コレラによる供給不足で最大28%の価格上昇(下半期に需要の20%に当たる50万トンの供給不足が発生する可能性)

補足

豚肉はベトナムの肉消費の3/4を占め、国内の供給不足が食肉市場への影響が大きい。しかし、それ以上に中国での供給不足は深刻で、更に米国からの輸入をキャンセルすることで需要不足を賄えておらず、二国間で大きな価格差が生じている。

FAOによると、2017年の世界の豚肉生産量は1億1989万トンであり、うち中国は5452万トン(45.5%)を占める。ベトナムは世界第6位の豚肉生産国であるが、その量は373万トン(3.1%)に過ぎない。

ベトナムから中国への豚肉輸出が増えたところで、中国はその供給不足を解消するものではなく、中国の豚肉価格への影響は殆ど無いだろう。ベトナムの豚肉価格を上昇させる要因にはなるが、しばらくの間、ベトナムの貿易業者は美味しい思いをすると考えられる。

参考文献

VN Express, “Increasing pork prices in China a magnet for Vietnamese traders”, 9 Sep 2019

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