インド人の金投資と仮想通貨投資

インドの人は伝統的に金(ゴールド)を集めるのが好きである。親族が結婚祝いや出産祝いに金を贈る事は珍しくないし、女性を中心に貴金属としての金を集める人も非常に多い。金を持っていても配当が出ないので投資効率は良くないが、それでも金を好むのは歴史的な理由がある。

インドは歴史的に異民族の侵攻が多く、為政者や王朝が変わることが珍しくなかった。為政者が変わると、従来の紙幣が紙切れと化したり、状況によっては安全な場所に逃げなければならないケースが出てくる。

そうすると、紙幣を持っていても価値が途端に失われるかもしれないし、土地を持って逃げることもできない。だから、価値が安定していて持って逃げられるゴールドが好まれた、というのが歴史的に金を買うのが人気の理由である。それは長い歴史の過程で生きる知恵として伝わっている文化なのだ。

それでも、ゴールドばかりに資金が集まるのは経済的に効率が良くないし、経常収支赤字を招く。それでインド政府はゴールドへの投資に規制を強めてきた。同様に外貨投資も制限がある。

その時、金に替わる投資先として出てきたのがビットコインであった。通貨ではないコモディティとしての地位を定着し、いざとなればアドレスとパスワードがあれば、資産を持って逃げられる。ネットバンキングでも良いかもしれないが、政治的状況によっては亡命先に送金できなくなるリスクがある。

実際、インド外で働く若者が、母国に送金する手段としてビットコインを使うケースも増えている。価値貯蔵の手段として若者を中心にビットコインを使うというのは珍しくなくなっている。

しかし、今度はインドは仮想通貨の「保有禁止」までを視野に入れた規制を検討している。コインベースの上場ゴール、トルコの仮想通貨決済禁止で大きく値下がりしたビットコインだが、更にインドが規制することになれば、本格的に相場が崩れる可能性が高いと言えるだろう。

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金融・マーケティング分野の機械学習システム開発や導入支援が専門。SlofiAでは主に海外情勢に関する記事、金融工学や機械学習に関する記事を担当。

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