投機的な事業が排除されるイスラム金融のスキームにおいては、従来型金融(一般的な意味での金融: conventional finance)よりも経済的なショックに強いとされ、リーマンショックでもそのような傾向が見られた。
新型コロナウイルスのパンデミックでは、原油価格ショックにより中東マネーの一部が引き上げられるなどのショックは起こったが、ESG投資などの一貫としても注目されていたイスラム金融は、今やイスラム教徒だけの金融だけでなく、幅広く投資が集まるようになった。S&P Globalによれば、2019年の二桁成長とまではいかないが、2021年には一桁台後半くらいとゆっくりと回復していくと見られている。
それでも2020年はマイナス成長を記録し、その回復スピードは従来型金融よりも遅いと予想されている。典型的なのがイスラム金融の債券スクーク(Sukuk)で、債券発行手続きの煩雑さが不況期には犬猿されるという。
イスラム金融においては、金融商品として法令に合致しているかや、事業としての採算性の判断だけでなく、イスラム法の基準に合致しているか(シャーリア適格)も判断しなければならない。そのためにはイスラム法学者の意見を求める必要が出てくる。
手続きが多ければ発行コストが高くなり発行スピードが遅くなるので、不況期において需要が乏しい時は、従来型金融の方が好まれるということだ。さらにはシャーリア適格の判断は、国や宗派によって異なり、必ずしも統一的な基準が存在するわけではないので、その点でも煩雑である。
一方でイスラム金融は、従来型金融でかなり進んでいるオンライン化やフィンテック分野との連携などが始まったばかりで、その点でかなり遅れているという側面もある。パンデミックを機にビジネスのオンライン化も一層拍車がかかり、今後イスラム金融の債券発行においてもオンライン化が進み、発行コストが抑えられる余地は大きいと見られている。