要約
- ダンキンドーナツはコーヒーに力を入れるためにブランド名からドーナツを無くした
- 以前から飲料売上比率が6割に達するなど事業実態にブランド名を合わせる形
- スターバックスとの株価を比較すると、競合企業として認識されるようになっていることが分かる
コーヒーチェーンがエスプレッソに焦点を絞った結果ダンキン株が下落(CNBC)
- ダンキン<DNKN:NASDAQ>は第4四半期決算発表で既存店売上高が横ばいを記録して6%以上下落
- 同社は第4四半期は新しいエスプレッソ飲料の展開に力を入れてきた
- 2018年にスターバックス<SBUX:NASDAQ>と競争するためにブランド名から「ドーナツ」を落とすと発表
解説
日本ではミスタードーナツに負けて米軍基地を除いて撤退しているダンキンドーナツだが、世界的には圧倒的に強いドーナツチェーンである。
いやダンキンドーナツ(Dunkin’ Donuts)改めダンキン(Dunkin’)である。2017年頃から看板から「ドーナツ」の看板を外す実験を初め、2018年夏にブランド名を正式にダンキンに変えることを発表し、今年1月からブランド名が変わっている。
健康志向が高まる中、同社の飲料売上比率も6割に達するなど、事業がコーヒーチェーンになりつつあった中、更に利益率が高いコーヒーに力を入れてスターバックスと競争するのがブランド名変更の理由である。
ブランド名変更には賛否両論があった。そもそも本来”doughnuts”という正式なスペルに加え、”donuts”が辞書に追加されたのはダンキンドーナツのおかげであるし、略してDDと呼ぶ人も多い。一方で、Dunkin’自体が「ドーナツをコーヒーに浸して食べる(dunk in)」が語源であり、ドーナツも残るという意見や、それに関連してDunkiesなどと呼ぶ地域もある。(The Guardian, Entrepreneur)
実態としては「コーヒー中心になっていた事業モデルにブランド名を合わせにいく」という形なのだが、スターバックスとの株価の相関を見ると面白い。
但し、単純に相関係数を見てもあまり意味が無い。どちらも同じ米国市場のしかもNASDAQに上場する銘柄である以上、NASDAQの変動の影響を大きく受ける。そこで、NASDAQとの相関の影響を取り除いた両者の株価の偏相関係数の推移を見る。2012年1月から2019年2月20日までの終値について6ヶ月間の相関係数を元に計算した偏相関係数の推移が以下である。
スターバックスの成長停滞懸念が強かった2013年終わり頃から2014年前半までを除き、変動しながらも偏相関係数は正の値を示している事が多かったが、少しずつ偏相関係数の絶対値が小さくなり、負の値を示す傾向が強くなってきている。
事業自体は以前からコーヒーチェーンとなりつつあったダンキンであるが、実際にブランド名変更やコーヒー製品開発の強化など目に見えやすい取り組みにより、ダンキンとスターバックス株がNASDAQの影響を除けば逆相関する傾向が生まれてきている(片方にポジティブなニュースがあればもう片方が下がる関係)、つまりマーケットがスターバックスの競合企業とみなすようになった(値動きがビジネスの実態に追いついた)と言えるのではなかろうか。
参考文献
CNBC, “Dunkin’ shares drop after coffee chain focuses attention on espresso”
The Guardian, “‘It’ll always be Dunks to me’: New England reacts to Dunkin’ dropping the Donuts”
Entrepreneur, “Why Dunkin’ Donuts Is Removing ‘Donuts’ From Its Name”