世界最大のパーム油生産国であるインドネシアとマレーシアは、環境負荷を影響に規制を進めるEUと対立している。EUの一部の国を味方につけたり、新たな輸出先としてインドなどを開拓したりといった事は行われているが、結局マレーシアはWTOの紛争解決手続を利用してEUのバイオ燃料規制に反対する訴訟の提起を決定した。
The Edge Markets, “Malaysia to file legal action with WTO against EU’s palm oil ban”, 1 Jul 2020
マレーシアが反対するのは、EUの再生可能エネルギー指令Ⅱ(EU RED II)の枠組みの中で、パーム油を持続可能でないもののと指定していることに対してである。
また、マレーシアはインドネシアの対EU訴訟の第三者としても参加する予定であると声明を出している。インドネシアは2019年12月にWTOを通して異議申し立てをしている。
EUでのパーム油への忌避感は強く、例えばスイスでは、インドネシアとのFTAに反対する国民投票が提起されており、パーム油による森林破壊が主たる理由である。インドネシアやマレーシアは持続可能な形での産業保持を目指しているが、今のところ同意を得ている国は少ない。
swissinfo.ch「インドネシアのパーム油は、スイスの時計製造よりも大きな存在」2020年7月1日
ただでさえパーム油産業は苦境に立たされているが、コロナショックと先日の逆オイルショックによりパーム油価格が低迷しており、インドネシア政府は1億9,500万ドルを小規模パーム油バイオディーゼル生産者に補助金として割り当てている。
更に踏んだり蹴ったりなのが、インドネシアで三番目に大きな州である中央カリマンタン州が、700を超える森林火災の発生により緊急事態宣言を発したことである。
REUTERS, “Indonesian province declares state of emergency over forest fires”, 1 Jul 2020
昨年は深刻な干ばつでインドネシアの泥炭火災が問題になったが、今年も乾季の到来により森林火災が増えている。
問題は新型コロナウイルスによる経済的影響で消防インフラの予算が削減され、十分に消火活動が行われない可能性があるということだ。緊急事態宣言は9月28日まで続き、早期消火ができるかが問題である。