マレーシアは10日からほぼ経済活動が全面的に再開される(国境の閉鎖は続く)ということで、人の流れが徐々に回復してきている。そんな中、マレーシア保健省(MoH)が懸念するのがデング熱の「第二波」である。
東南アジアでは一般的にデング熱のピークは雨季と乾季に来るというのは、以下の関連記事でも指摘した通りだ。タイやマレーシアなどが典型的だが、雨量が多い時期は勿論、その後に来る乾季もデング熱を媒介するヒトスジシマカが増加しやすい。
関連記事:再び東南アジアで猛威を奮うデング熱
日本で言う春頃は東南アジアは暑気であり、デング熱の症例は少ない時期である。2019年は異常気象もあって東南アジアではデング熱の症例が多かったが、今年はロックダウンの影響で自宅にいる人が多かったこともあり、以下のように2020年(赤色)は2019年(青色)に対して途中から大幅に下回っている。2019年12月29日~2020年5月30日の症例は46,713件で、前年同期52,941件より11.8%少ない。
それでもここ数週間は徐々に増加しており、グラフでは分かりにくいが、最近の増加スピードは前年よりやや早い。これは、今年の減少はあくまでもロックダウンの影響であり、天候上の問題ではないからだ。人の動きが増えるに従って増加するのは自然である。
しかも保健省が懸念するのは、「ロックダウンで人があまり出入りしていなかった場所で蚊が繁殖している可能性」である。人がいないと他の生物の天国になるが、そうすると蚊も増えやすい。そうした施設で感染が増加する懸念があるということだ。
参考文献:Bernama, “MOH expects second wave of dengue cases”, 8 Jun 2020