米国の属性別投獄率の推移

2020年4月30日に米司法統計局(BJS)が発表したPrisoners in 2018によれば、ここ10年間で米国の刑務所への投獄率が減少すると共に、その人種差が是正されている傾向が見られる。

以下は2008~2018年の属性別(白人、黒人、ヒスパニック)の人口10万人当たりの投獄率の推移を示している。どの属性も減少傾向にあるが、特に黒人(1,580人→1,134人<-28.2%>)とヒスパニック(691人→549人<-20.5%>)の減少率が大きい。これは白人(250人→218人<-12.8%>)に大して顕著である。依然として白人以外の投獄率は高いが、それでも過去10年間で人種差が是正されてきている傾向は伺える。

この背景には、人種別の経済的格差の是正、1990年代以降の黒人の暴力犯罪率の大幅な減少、司法による人種的偏見の是正傾向など様々な理由が考えられる。

上記データは金融危機下のピークからの推移だけである。以下は1978~2018年の米国全体の人口10万人当たり投獄率を示している。1999年と2007年と2つのバブルのピーク周辺で投獄率が高くなっているのが特徴的である。

男女比で見れば圧倒的に男性の方が投獄率が高い。以下は2008~2018年の男女別投獄率を示している。時間の都合で両軸グラフにできておらず見辛くて申し訳ないが、男性の方が10年間での減少率が高く、男性は-9.3%に対し、女性は-3.3%である。この点から男女別に見てもやや格差が是正されてきていると言えよう。

一方で、少し特徴的なのが以下のグラフである。The Marshall Projectの分析によれば、女性に限って見れば、黒人の投獄率は大幅に減少しているのに対し、白人の投獄率は急増しているということである。男性の場合は黒人は大幅減、白人は横ばいなのだが、白人女性に限って大幅に上昇しているわけだ。

The Marshall Project, “A Mass Incarceration Mystery”

この背景の一つに、主流である薬物が、黒人コミュニティで主流だったコカインとマリファナから、メタンフェタミン(いわゆるヒロポン)とオピオイドへのシフトがある。後者は白人女性が好んで用いると分析されており、白人女性に限って投獄率が上昇している理由として挙げられている。

今後の動向を予測するならば、

  • 新型コロナウイルスを端緒とする経済収縮に伴う犯罪率の増加
  • 大麻合法化の流れに伴う薬物犯罪率の低下

がキーポイントとなるだろう。前者は圧倒的に多く、投獄率も大幅に上昇する可能性はある。また、トランプ大統領が大統領選挙の材料として中国ウイルスを取り上げていることからも分かる通り、民族的な対立などに伴う犯罪なども増えるかもしれない。これは潜在的には暴動などのリスクも伴うものである。

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