新型コロナウイルスによる貿易制限や飲食店の閉鎖などで中国の魚介類需要は落ち込んでいる。ベトナム海産物輸出者協会(VASEP)は2020年第1四半期の水産物輸出は少なくとも20%減少(中国向けは40%減)すると予測している。
しかし水産物業者は、長期的に見れば新型肺炎によって中国の消費者が食習慣を変え、畜産物や魚介類などの加工品にシフトする可能性があると期待している。
Vietnam+, “Seafood exporters advised to keep close watch on market development”, 21 Feb 2020
武漢を中心に拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)は海産市場に売られているヘビやコウモリなどの野生動物が媒介したと考えられている。コウモリの刺身(閲覧注意)などは食文化の違いと言えばそれまでだが、畜産物ではない野生動物を獲ってきて、生きたまま市場で流通させるというのは感染症の蔓延の根本原因となる。
新型肺炎を契機に、中国消費者の意識が変われば魚介類の消費増につながるのではないかというのがベトナム業者の淡い期待である。
「淡い期待」と書いたのは、SARSの時は何も変わらなかったからである。しかし、東南アジアの昆虫食などを見ても、従来はどこで採取してきたか分からないような昆虫料理が屋台で売られているのが今も主流だが、衛生面を徹底したコオロギの飼育・加工を行なうスタートアップEntoなど公衆衛生概念や所得の向上に伴って同じ食文化でもより現代的な形も増えてきた。そういう意味では、長期的には中国における魚介類消費の向上も期待できる。
少なくとも年後半の回復は期待できる。中国でもベトナムでもアフリカ豚コレラが蔓延して豚肉価格が大きく上昇してきた。新型肺炎の影響で一時的に豚肉価格はショックを受けたが、基本的な供給不足の構造は代わっておらず、代替品として魚介類の消費が国内外で増えるシナリオは十分に考えられる。