今のところESG投資はバズワード化しているが、望むと望まずに関わらず、この種の環境や社会に配慮した投資というのは今後長期的に重要になってくるのは間違いないだろう。
今のところ何をもってESGに配慮した企業と言えるのかという国際的に統一的な基準が無いことが問題であるが、少なくとも化石燃料や銃を扱うような企業は対象外とされることが多い。
例えば今年の4月にはニュージーランドの公的年金基金が銃関連企業7社を投資対象から外している。これ自体は3月の銃乱射事件による規制強化を受けた倫理的な観点からの判断だが、ESGの議論で銃は必ずと言っていいほど登場し、ESGの枠組みに入ると考えて良いだろう。
参考:nippon.com「NZ年金基金、ダイセル、日油を投資対象外に=銃関連企業7社が対象」2019年4月15日
この7社の中に日本企業ではダイセルと日油が含まれているが、理由が「火薬関係を手掛けているから」であり、かなり細かく事業内容が見られていることが分かる。
仮に「ESGとは言えない事業」というものが国際的に明確化したとして、今度はそれを「どれだけ許容するか」という事が問題になる。
先日CNBCが「銃関連株に投資しているかを確認する方法」としてWeapon Free Fundsというウェブサービスを紹介している。ここではヴァンガードやフィデリティ・インベストメンツなど米国系のファンド名で検索すると、「ポートフォリオに占める武器関連株の割合」や「自ら武器関連株に投資しているか」などの観点でグレード分けがされている。
例えばSPDR S&P 500 ETFで検索すると、2019年11月27日時点で武器関連株は17銘柄、ポートフォリオに占める割合が5.92%としてグレードは最低ランクのFとなっている。同サイトでは
- 軍事用の兵器
- 市民用の武器
- 化石燃料
- 森林破壊
- 男女平等
- タバコ
と6観点で指標化されており、これらを何らかの理由(政治的理由、宗教的理由、社内規則的理由など)で回避しなければならない場合には参考になる。
一方で、CNBCも指摘するように、こうした銘柄を完全に排除することは事実上不可能である。例えば投資対象企業が直接的に兵器製造事業を行っていなくても、その企業が銃関連企業株を保有して配当を受けている場合はどうするのか。これが許容されなければ上記のようなS&P 500を対象とするETFを企業が持つことができなくなる。
ニュージーランドの公的年金基金の例はやり過ぎと言える。「ポートフォリオの何%まで」といった許容範囲を決めなければ逆にESG投資の普及を損ねることになるだろう。
「ポートフォリオの何%まで」 で割り切っているのがイスラム金融である。イスラム教のハラールに関しては厳格に守る信者も多いが、イスラム金融において「シャーリア適格なファンド」というのは、こうした厳格さを半ば諦めており「売上の5%以内」というルールで共通化されつつある。
そうしないと、企業が銀行から受取利息をもらっているだけで駄目となってしまうのであり、イスラム金融の対象となる銘柄は本当に限られてしまうことになり、逆に普及を損なう。そうした意味合いから5%という基準が決められている。
ESGに関しても同様の基準が必要と思われ、特定の事業に投資しているから投資対象として認めないという発想には問題があると思われる。
参考文献:CNBC, “How to tell if you’re invested in gun stocks”, 15 Nov 2019