ヘリウム供給問題の緩和が来年以降という見通しが強まってくる中、それを後押しするように南アフリカがアフリカ大陸初の商業ヘリウム生産国となる見通しが高まってきた。
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南アフリカが国際ヘリウム市場に参入しようとしている(Ventures Africa)
- 南アフリカのエネルギー会社Renergen<REN: Johannesburg>がアフリカ初の商業用液化天然ガス(LNG)プラントおよび液体ヘリウムプラント事業を開始予定
- 18.7万ヘクタールのヘリウム/天然ガス田に250億立方フィートの天然ガスとヘリウム(最大11%濃度)が確認されている
- 今年2月に米国政府系海外民間投資公社(OPIC)がプロジェクトに4,000万ドルの融資を承認
- プラント機器については中国のWSCEと、パイプラインについては南アフリカのEPCM Bonisanaと契約
- 2021年に創業が開始され、当面はLNGが1日当たり645.3トン、ヘリウムが国内需要に相当する350kgを生産する
- ヘリウムの主用途が医療業界であり、中国の中産階級がヘルスケアにアクセスできるようになったことで、南アフリカでのヘリウムは世界的に見て重要な発見
補足
宇宙がビッグバンにより誕生して水素から順に元素が核融合によって生成された背景から、ヘリウムは宇宙で2番目に豊富な元素である。しかしながら、地球においては大抵は天然ガスの中に閉じ込められており、多くの場合は1%未満と低濃度である。
よって、ヘリウムの商業生産は天然ガスの存在に依存し、かつ、高濃度なヘリウムが存在し、更に抽出技術が問われるので供給が安定しないという問題がある。
殆どが1%未満の低濃度であるため、一般に1~7%あれば高濃度と言われる。そんな中、南アフリカで見つかった天然ガス田においては、最大11%もの高濃度のヘリウムが閉じ込められていることが分かり、期待が大きいというのが記事のポイントである。
操業開始は2021年で、当初は南アフリカの需要を賄う分だけの生産から始まるが、アフリカ大陸と中国の経済的な結びつきは強く、増えるヘルスケア用途での需要を考えれば、増産も期待できる。
2019~2024年の間に世界のヘリウム需要も年平均3~4%で増加していくと考えられており、近い将来、世界で8番目のヘリウム輸出国になると考えられる。
参考文献
[1]Ventures Africa, “South Africa looks to tap into the global helium market”, 30 Oct 2019