吉野彰氏らが開発したリチウムイオン電池だけにとどまらず、リチウムは様々な分野で利用される。漂白(次亜塩素酸リチウム)や農薬、アルミリチウム合金、 コンクリート補修(亜硝酸リチウム)、 医薬品(炭酸リチウム)など枚挙に暇がない。
リチウムイオン電池だけで見ても、今後更に電気自動車やスマートフォンが世界中で普及していくことを考えれば、世界的な供給プレイヤーとして名を連ねることの意味は大きい。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構によると、現在、リチウムの主要生産国は、チリ、オーストラリア、アルゼンチン、中国で世界生産の大半を占める。未だ開発が進んでおらず、世界最大の埋蔵量があると言われるボリビアなど次なる主要プレイヤーを目指す国はいくつかあるが、その中で新たに名乗りを挙げているのがルワンダである。
ルワンダといえばルワンダ虐殺のイメージがどうしても強いが、2000年から続くカガメ大統領政権によって政情が安定化し、高い経済成長率を実現し「アフリカの奇跡」とも言われる国である。海外からの投資も増えており、つい先日世界銀行が発表したばかりのDoing Business 2020での「ビジネスのしやすさランキング」ではルワンダは世界38位、アフリカ大陸では1位を記録している。(日本は29位。)
治安も良く、2019年10月31日時点では外務省の海外安全情報では特に指定されていない。(エボラ出血熱による感染症危険情報のレベル1は出ている。)
一方で株式投資家からの投資はあまり集められていないのが現状である。また、経済成長著しいと言えども、未だ農業(コーヒーや茶など)が労働人口の7割を占め、GDPの33%以上を占める。今後の経済の高度化のためには株式投資家を集めて産業を育成していくのが重要であり、その材料として期待されているのがリチウムである。
ロンドンのコンサルティングファームであるロスキルインフォメーションサービスによると、探査作業によってリチウムが豊富に埋蔵されている地域がいくつも見つかっている。選鉱会社であるPiran Resources Rwandaも来年からリチウムの本格的な探査を開始する予定である。但し、探査活動に必要な資金の不足が問題となっており、株式投資家を集めるのが重要になってくると考えられている。
参考文献[1]:The New Times, “Could lithium be Rwanda’s next big deal?”, 28 Oct 2019
参考文献[2]:World Bank Group, “Doin Business 2020”
参考文献[3]:石油天然ガス・金属鉱物資源機構「リチウム生産技術動向ー最新動向ー」2018年12月13日(PDF注意)
参考文献[4]:外務省「ルワンダ共和国基礎データ」
参考文献[5]:外務省「海岸安全ホームページ」