ベトナム国会の社会問題委員会で労働法修正案の議論が行われている。民間部門の労働者の週48時間勤務を週44時間勤務に短縮するのが主な内容である。現在は1日8時間の週6勤務(休日は日曜日のみ)が標準だが、土曜日の午後も休みにする、つまり半ドン(死語)にする案である。
ベトナム労働総同盟の元会長ブイ・ヴァン・クォン氏は委員会で労働時間の削減のメリットとして、
- 公的部門で週40時間しか働いていないという不平等の是正
- 家族や健康を労る時間が増える
などを挙げた。
公的部門では週労働時間が短いだけでなく、政府高官の30%が「仕事で何もしない」という報告もあり、是正が求められていた。
しかし、民間部門からは反対意見が多い。というのも、ベトナムの法定労働時間は世界的に見ても長い一方で、正規の労働時間が厳守されるように動機付けられる仕組みになっているからだ。
ベトナムの時間外割増賃金は、
- 時間外割増:150%
- 深夜残業:200%(休日なら270%)
- 休日割増:200%(祝日・有給休暇取得日なら300%)
など日本よりも割増率が高い。(これについての比較や細かい制度については、多田国際社会保険労務士事務所が詳しい。)
また、週36時間以上の残業は原則として禁止されており、時間外割増賃金を考えれば、法定労働時間の減少はそのまま総労働時間の減少につながるからだ。
これについては企業だけでなく、建設労働者など低賃金労働者からの反対意見も見られる。しかし、ベトナム労働総同盟が9月に実施したオンライン調査では、回答者1,300人のうち81%が法定労働時間の削減に賛成しており、賛成者は多いと見られる。
修正案は10月21日に再度議論される見通しである。
参考文献[1]:VN Express, “Vietnamese lawmakers remain insistent workers should work less”, 4 Oct 2019
参考文献[2]:VN Express, “81 percent of workers want less working hours”, 11 Sep 2019
参考文献[3]:多田国際社会保険労務士事務所「ベトナムの労働法」